Part3 革命軍の状況
話の区切り上、ちょっと短いかもしれません。
「それで……あの戦闘はどこが戦っているんだ?」
話を逸らすために、平原の一角で起きている争いの場を指さして質問する。
聞かれた直後は呆けていたリゼニアは、少ししてから現実に復帰した。そしておもむろに語り始める。
「あそこにいるのは……この国の国軍と、革命軍です」
「ほう、この国では革命が起こっているのか」
説明に思わず納得の頷きを入れるが、話は止めずに先を促す。
「はい……それで、革命が起きている理由なんですが……」
そこで言葉に詰まるリゼニア。その様子から何となく事情を察する。初めて出会った割には、意志疎通ができていたのは私の技だろうか。それとも、リゼニアの技か。
「仕方あるまい、街に着いてから改めて聞くとしよう」
ここではおそらく、私の方の技だろう。自分で言うのも何なのだが。
「それで、色々あって起こった革命ですが……戦力の差が激しすぎて……」
「なるほど、一方的に負け続けて退き続けている訳だな。ありがちなことだ」
言葉の先を引き継いで答えを導き出す。
確かにそんな状況ではまともに戦い抜くのは難しいどころか困難を極めるだろう。士気的にも、経済的にも、そして戦力的にも。ここまでに何度小競り合いがあったのかは分からないが、数度の戦闘でじわじわと戦力を削られていたのだとしたら押されるのも頷ける。
どうやら、革命軍の戦況は芳しくないようだ。
「しかし、ここまで逃げが込むのであればいっそのこと本拠地で籠城戦に切り替えればまだ時間は稼げるのではないのか? その間にでも近隣に応援要請を飛ばせば生存確率はぐっと上がるはずだぞ?」
つらつらと打開案を出してみると、リゼニアに茫然とした様子で凝視された。その目からは「そんな手があったのか」と言わんばかりの何かが感じ取れた気がした。
だが、すぐに表情を元の何とも言えない微妙な感じに戻してしまう。
「……その、食べ物とか武器とかが……」
「そういうことか。兵糧と武器在庫数が絶対的に少ないのも踏み切れない要因か」
この言い方から察するに、本拠地自体の防衛能力も高くないと簡単に推測できた。
防衛能力の高い拠点は戦力維持のために食料や武器を予め備蓄しておくのがセオリーであり、その数量は『もし長期的な包囲網を敷かれ兵糧攻めをされた場合に、増援がたどり着くまでの間持ち堪えられる量』と『攻め込まれず通常のペースで一定期間消費されたとした場合の、保存期限を考慮した量』とのバランスを鑑みてはじき出される。このバランスを間違えた時には兵糧不足に陥るか食料を廃棄する羽目になるか。
どちらにしたところで、理想的な状態からはかけ離れてしまう。
そして、推測はすぐに確定したものになった。
「それに、街の周りにはなにもないので……」
「いよいよ末期的じゃないか……」などとは口を裂いても言えなかったが、それに近い表情になってしまっていたのだろう。リゼニアが更に顔を俯けてしまう。正直、いたたまれない。
だから、リゼニアの肩に手を置いて、励ますように微笑んでみせる。
「なに、これからの努力如何によってはどうにでもなる」
「……でも、街に専門家なんて全然いなくて……皆王都に招聘されちゃって……」
「仕方ない、どんな奴だって自らの目が届く範囲内に危険人物を置いておきたいのは当たり前なことだ。刃向いそうな人間を手放しにしても得はないからな」
一切の感情を捨て、事務的に淡々と、それでいて感情が見え隠れするように絶妙に励ましの言葉を連ねてやる。
例えそれが起爆剤になったとしても、私は私の気の向くままに動き続ける。
それが最善手だと、今までの軍役で思い知らされたから。