第十三話
Aランク依頼。
依頼者:村の娘X
依頼内容。
ここ最近私たちの村の近くの動物たちが騒がしいのです。何かいると思い村の男たちは調査に向かったのですが、誰も帰ってきませんでした。私たちは何かが森の中にいると思いました。そこで騎士の方々に来てもらい調査を頼んだのですが、騎士の方々はぼろぼろになって帰ってきました。どうやら大きな魔物がいるらしいのです。騎士の方々は手に負えないと言って帰ってしまいました。私たちは今その魔物におびえながら暮らしています。いつ大型の魔物が襲ってくるのかわからないのです。どうかお願いします、魔物を退治してください。
依頼目的:正体不明の魔物の討伐
「前置き長いうえに、まさかの正体不明!?」
「前置きが長いのは情に訴えるためだよ。でないと誰もこんな正体不明の魔物の討伐なんて依頼受けないからね」
先生どうしてこんな依頼受けたんですか、Aランクでももう少し他にも良い依頼があったはずですよ。しかも全然暗殺者っぽくないし、これただの冒険者じゃないか。
俺は期待外れの依頼に肩を落とす。
死ぬのかな、俺。
戦闘慣れしている俺でも、敵が正体不明となれば対策も練れないし、何よりAランクである。もうこれは終わったかもしれない。先生を見るがいつもどおり何も考えてなさそうな顔をしている。助けてくれるとか言ってるけど大丈夫かな
転移ができないので馬車で移動、こんなときに使えないあの円盤型の装置。あとでエドワード先生にけちをつけておこう。しばらく馬車で移動すること数時間。まじで腰が痛い。
依頼主がいる村に到着した。村は小さかった、家がぽつぽつとあり畑が広々とあった。村の真ん中にお店と診療所がある程度である。他には馬車が止まっているだけである。本当に小さな村だった。特徴的な事があるとすれば、村の奥の方に広がっている広大な森である。どうやらここの住人は森の中に住んでいる動物や木の実を収穫して生きているらしい。森の中には様々な生き物が住んでおり、たまにこう行った魔物関連の事件があるらしい。
「依頼を受けた者だ」
先生は一言そう言うと村の長がいる家へと案内された。
村長の家は特に他の家と比べて何かがよかったという訳ではなかった。村長の家に入ると中には椅子にゆったりと座った老人と女性がいた。
「わしがこの村の村長じゃ」
「依頼を受けた者です」
「こんな所まで依頼を受けて来てくれたことを感謝するぞ。それでは話をしようか」
ん?これって長くなるんじゃ……
そうでした。
長かったです。でも中には有力な情報がちらほらとあった。森の中に住む動物のことや奥の方にいる魔物のこと。どうやら騎士たちを返り討ちにした魔物は今までいなかった魔物だと思われているらしい。生まれてから今までこの村に住んできた村長が言うのだ、ここまで手ごわいのはいなかったと。
「とにかく、まだ見ぬ敵は強大じゃろう。そこでこの村からも一人助っ人としてお渡ししよう」
そこで村長の隣に立っていた女性が一礼した。
彼女はここの教会のシスターをしているらしい。シスターなのに戦闘経験もそれなりにあり尚且つ村の診療所を経営しているらしい。薬などの調合にも精通しており、雑貨店にある薬は全て彼女が作ったものらしい。
「いやいらないっす」
先生は真顔で協力を拒む。
「ふむ、しかし」
「私たちはそれなりに準備をしてきたし、人が増えるとめんどうなので」
めんどうの一言で一蹴されてショックを隠しきれないシスターさん。しかし先生の言うとおりである。敵がわからない以上、見方が邪魔になる可能性のほうが高い。
「私では役に立たないのですか?」
「うん立たないね」
そしてまたショックを受けるシスターさん。先生もうちょっとオブラートに包みましょうよ。
「まぁ私たち二人でも大丈夫ですよ。じゃあ宿かどこか貸していただけますか?」
「いやぁタダで良い宿に泊まれるのはいいね!」
「同意しますけど、どうして同室なんですか!!」
そう、俺は今リズ先生と同じ部屋にいる。部屋は大きく二人部屋にしてはもったいないほどである。ベッドはセパレートで一人一つずつあるが、やはり同質であるのが問題なのである。
「元々空き家なんだから仕方ないだろう。それともなんだ私を襲うつもりなのか?」
「いやそれは……」
先生を襲いでもしてみろ、十七分割ぐらいされても文句は言えないぞ。
「もうちょっと勇気を出してみたらどうだい?しょ・う・ね・ん」
「勇気と無謀を間違えたりはしませんよ」
「あらそうかい」
先生はそう言うとベッドに寝そべった。
俺は荷物をほどき武器や衣類をだした。敵はどんな形をしているのだろうか、どんな技を使ってくるのだろうか、どれほど強いのか。考えるたびに敵が恐ろしくなる半面楽しくなってきたのだ。しばらくは調査になるだろう。森の中に入って敵を探し、発見しだい討伐できるのであれば攻撃か。
今日は夜が遅いのでもう寝よう。
俺はベッドに近づき右を見ると大の字で寝ている先生がいた。
静かにしているとすごく綺麗な人なんだけどな、職業がブラックすぎる。
「おやすみ先生」
一言そう言ってから俺も自分のベッドの中に入った。




