episode04 命運のハッキング
2014/07/30 11:30 プラネットゲーム社本社前。
「おいおい・・・冗談だろ!」
錦戸と海はその本社ビルに度肝を抜かれていた。国内シェア上位の会社の本社がこんなところにあったとは・・・。
「知らなかったの?」
中学が同じだった木村はさらっとそんなことを言い放った。
実はプラネットゲーム社には事務本社と工業本社の二つが存在する。
それ故に事務本社の存在はあまり重要視されていない。
彼らはプラネットゲームの事務本社に足を踏み入れる。
11:05
「いらっしゃい。」
「き、聞いてないぞ!?」
錦戸は焦った様に人のいない応接間で藤井のそう言う。
藤井は少し焦った様子だが「ちゃ、ちゃんと説明するわ。」と返した。
12:00
向こうで話をつけていたらしく少し疲れた表情で応接間に再び現れる。
ソファーに腰掛ける。
「未来を・・・見たいんだろ?」
最初に口火を切ったのはこの状況下で何故か錦戸だった。
そして、カバンから一枚の紙を出す。
「そして、その未来とはこれに関係している。違うか・・・?」
「ば、買収の話!?」
藤井は心底驚いた表情。
対して錦戸はしてやったりの表情と申し訳なさそうな表情の二つを持っていた。
勝手に漁ったのは悪かったけどね。と付け加え・・・。
「これが主軸で間違いないな?」
コクリと錦戸の質問に首を縦に振って答える。
「実はね・・・。私、ビットプロダクションの社長と結婚することになってるの。」
「なっ!?あ・・・確か女子は17には結婚出来たから・・・。」
向こうで呑気にバイオヒルに励む海と木村を他所に話を続ける。
「しかし、ビットプロの社長と言えば・・・。ロバーツか。」
「知ってるの?」
「あぁ。プログラマーからすればリスペクト人物だわな。それに写真見たことあるがモテるらしいしな。」
そこには同意と藤井が返す。
しかし、本人的には勿論そんな話を受け入れたいわけが無いと言う。
何でも、性格が問題有りらしい。
「それでね。アルタイル?に見てほしいのは・・・。一年後、私がどうしているか・・・。」
「いや、少し待て。何故株式時価総額2000億以上のブラネットゲームが買収される?」
錦戸は率直な疑問を持っていた。
そ、それは・・・。と返答に悩む藤井。
ガチャン!
その途端、応接間の扉が開け放たれる。
「フハハハハ!綾香!来たぞ!」
その何とも中世の皇子を思わせる発言はとても日本人とは形容出来ない男。
「ろ、ロバーツ!」
藤井は驚いた表情でロバーツと呼ばれた男を見る。
男の顔に錦戸は見覚えがあった。
「そこの変な男は?」
「変な男とは何だ?ビル=ロバーツ。」
「ほぅ。私を知っているのかね?」
「あぁ。それもすこぶる愉快な男だとね。私はこれでもプログラマーの端くれでね。だが、それでもここまでとは・・・・。」
「なんだと!!」
ロバーツは大層怒った様子だ。
だが、そんなこと関係無い。
「きさま。ゲームは出来るか?」
「ゲーム?ジャンルは?」
「FPSだ。」
「FPS?悪趣味だな。俺はストーリー重視だからな。それならば、あいつに頼め。」
錦戸がいつも癖で指を差したのは木村。
木村は未だ呼ばれたことに気づいていない。
「あのお壌ちゃんが?」
「姿形は関係無い。」
「え?わ、私ッ!?」
□■
16:40 開発所。
「ちょちょ!ロバーツはFPSの大会じゃ3冠王で有名なのに!あんn」「俺達には運命を変える力があるといえば?」
「安易に未来を変えることには賛成しないわ。」
加藤が開発室に入る錦戸を寸前で止める。
なにしている?と錦戸が開発室のその先を見据えた表情で加藤に問う。
そこで一層握る力が増したことを感じる。
「じゃあ、お前は・・・藤井が望まない結婚をすることを良しとするのか?」
「それは・・・。でも・・・。」
パッ!と俺はその腕を振りきる。
―策は考えてある。まずは通常で勝負した際を予測するか。
携帯を開き、【ビル=ロバーツと木村のFPS勝負。】と打ち送信する。
連動するようにアルタイルが唸りを上げた。
暫くすると、メールを受信する。
【敗北▽】
と表示されている。
「なぁ。俺が考えるに・・・この三角の記号には曖昧さが残っている。」
「曖昧さ?」
海が反応する。
「あぁ。アルタイルを使って未来を変える。その結果は表記されていないわけだ。」
「まぁね。」
その話が終わるなり錦戸は木村!と名前を呼ぶ。
木村は心配した表情で開発室に入る。
「今回勝負するのはワールドウォーだって言ったな。」
ワールドウォーとはビットプロダクションの出す代名詞作品。
ロバーツ自身が最高傑作と称し、口コミだけで広がった。
「そして、奴自身が十八番としているゲーム。奴の動きを超えるには・・・。」
奴の動きを予測しなければならない。
錦戸はメールで手当たり次第に未来を投げ込む。
動きを知れば知るほどこちらのものというわけだ。
そして、最終的には・・・。
【勝利▽】
と表示されるまで至った。
「このメールを転送しておく。」
「・・・うん。」
錦戸を除く全員がどこか神妙な面持ちでそれらを見守っていた。
加藤も勿論。
そういえばさ。と突然海が話しかけてくる。
「あの掲示板のゲイツはどうしたんだろうな。」
と話しかけてくる。
恐らく、彼なりに考えた場の和ませ方というわけだろう。
17:20
開発室には錦戸と海、加藤だけの姿があった。
暑い中動いているのはネットに繋げてあるネット閲覧用のFMV C5/665。
そこに広がるのはネットの海。
特にお気に入りの掲示板:海草ちゃんねる。
そこには未だゲイツが光臨したままだった。
2014/07/30 17:21
投稿者:ゲイツ
内容:アルター204と呼ばれる特殊なCPU・メモリが組み込まれた国家機密級のスパコンをご存知ですか?
2014/07/30 17:21
投稿者:名無し
内容:アルター204?聞いたことあるな。オールニューネットの運営しているっていう伝説のスパコンだろ?
2014/07/30 17:22
投稿者:名無し
内容:公式では画像と「高い演算能力」しかアップされてないよな。
添付ファイル:alter204.jpg
画像をクリックする。
広がったのは普通のスパコンとは大きく違う点が無いとも言えるスパコン。
側面にはAlter204と大きく書かれている。
2014/07/30 17:22
投稿者:ゲイツ
内容:このスパコンにはBSに繋がる何かがあるらしいです。
2014/07/30 17:22
投稿者:名無し
内容:何か?
2014/07/30 17:23
投稿者:ゲイツ
内容:データベースの内の一つです。番号は「14-」からスタートなんですがその後は私も・・・。
―14-・・・!?
錦戸の中で何かのパーツが揃う。
「14-NKYKANHT-20・・・・。」
「え?な、なにそれ。」
「あの血文字の頭文字と・・・。・・・・・・・・・。今日も徹夜になるぞ・・・・。」
一同がギョッとした表情を浮かべる。
な、何言ってるの!?と加藤が言う。
「これは緊急事態だ。」
2014/07/30 17:24
投稿者:名無し
内容:それ「14-NKYKANHT-20」じゃね?
2014/07/30 17:24
投稿者:名無し
内容:意味わかんね。適当かよwwww。
適当なん?という言葉が聞こえたが放っておくか。
2014/07/30 17:24
投稿者:ゲイツ
内容:適当であろうとなかろうと・・・それが本当ならアルター204内のデータベースにハッキング出来る筈!
2014/07/31 00:00
「今日で、7月も終わりか・・・。」
錦戸はカレンダーを眺めながら呟いた。
あの後、暫く掲示板を見つめていた俺達は結局帰れなくなった。
残ったのは勿論錦戸と海、加藤。
「早いわね。FPSの大会って8月の2日でしょ?大丈夫?」
「・・・。あぁ。アルタイルの言を俺は信じている。・・・・。さぁ、始めるか。」
00:10 開発室。
「は、始めるって何を!あんた、何しようとしてるの!?」
「アルター204へのハッキング。」
「ば、。世界最高且つ国家機密を扱うスパコンよ!?できるわけ!」「出来る!」
錦戸は加藤が話している上に話を加える。
「どうして、断言出来るわけ?」
「勘か何かさ。」
錦戸はそういうと椅子に座る。
隣で海がパイプ椅子に。加藤は呆れた表情で談話室のソファーで少し仮眠を取るらしい。
オールニューネット社のハッキングはいとも簡単だった。
まるで待っていたかの様に。しかし、肝心のアルター204のハッキングが行き止まりだった。
「駄目じゃん。」
「・・・もう少し粘ってみるか。」
02:30 開発室。
「このデーターベースだな。アルター204の管理をしているのは・・・・。」
錦戸は14-NKKYABMAS-20と入力する。
「ひ、開いた!」
02:35 データベース14-NKKYABMAS-20内。
そこにはメールリストを始め、果ては非公開の論文まで存在している。
「本当にこんなものが・・・。」
だが、一際この型番内に見えるのはBSの情報。
そこにはアルター204に関する情報もある。
「これって・・・アルタイルと同じ様な機能を搭載してるっぽいぞ!」
「・・・。」
錦戸は黙って画面を見続ける。
画像がアップされている。新聞記事だ。
「日付は2020年・・・だと?」
「BS社がアルター208の開発に成功って見出しだな。」
「これってさ・・・つまり、BS社が未来の予測が出来るということ?」
その後からはあまり見たいと思うものは無かった。
世界恐慌。秘密社会主義。アメリカ合衆国・日本国の解体。貧富の差拡大。年を増せば増すほどそれはひどくなるばかりだった。
それらが全てBS社の支配によるものだと知っていたからだ。
「もう、やめよう。」
錦戸はパソコンのスイッチを切る。
すると、早々と談話室に出る。
談話室の奥のほうに置いてある布団を二枚取り出す。
いつもならば、ソファーで寝るのだが連日の疲れからか加藤がぐっすり寝ている。
布団を引き終わるなり海は寝てしまう。
錦戸はそれを見守りつつ外に出た。田舎だけあって辺りは街灯以外何も無い。
有り難いのは開発所は割りと住宅地にあること。
実家に至っては近所へ行くのに10~15分はゆうにかかる。
そのため街灯は一つ程度しか設置されていなかった。街灯の灯りを眺める。
―・・・海や加藤を巻き込んで・・・良かったのか?
良いわけ無かった。自身の身ですら案じて止まない。
だが、後戻りはもうきかない。それを恐ろしいほど錦戸は理解していた。
なにしているの?という声も最初は届かなかった。
「か、加藤。寝てたんじゃー?」「目が覚めたのよ。中村、いびきうるさくって。」
「あぁ・・・。」
錦戸は納得した表情だった。
「で、ハッキングは?出来たの?」
「アルター204内にあった14-NKYKANHT-20というデータベースには侵入出来た。だが、良いものでは無かった。」
「・・・何てあったの?とは聞かないでおくわ。」
「あぁそうしてくれ。」
「表情で分かったわ。」
―そんなひどい面してたのか?
錦戸は直ぐに己の顔を鏡で見てみたかった。
そろそろ寝るか・・・。と言うと所有者の家の裏口に入り共同のトイレに入った。
そこには鏡もある。
「ははは。こりゃひどい。」
連日徹夜で既に目の下のクマもひどい。
少し苦笑して錦戸は開発所の前にある駐車場に戻ってきた。
そして、裏口に入ると鍵のかけられる入り口の周辺に転がっている脚立を開発所に立てかける。
カンカンカンとアルミで出来た脚立を登っていく。
屋根につくなり錦戸は一番広いところに寝転がった。そして、上空を眺める。
2014/07/31 時刻不明
ミーンミンミン・・・・。ジリジリと全身が焼かれている。
辺りはセミの声がやけに鳴っていた。
奇妙なことに2時頃からかけて屋根で寝ていた男がむくりと起き上がる。
「ここは・・・どこだ?」
いつもとは違う行動を取った錦戸が自分がやけに高いところにいることを悟るのに時間がかかっていた。
携帯を見ると既に10時。
2014/07/31 10:00
さらにトレインも受信していた。
「さ、澤田さん・・・。」
ようやく自分が開発所の屋根で寝てしまったことに気がついた錦戸は全身を痛めつつ開発所に入る。
しかし、開発所に人の姿は無かった。
布団も全て片付いている。
―帰ったか・・・?
ソファーに腰掛けるとトレインに返信を送る。
「部活は昼からだから貸すよ!・・・な。」と送った文面を読み上げる。
「ん。」
「?」
「おなか・・・すいてないの?」
「あ、あぁ。ありがとう。」
加藤と海はどうやら買出しに出ていたようだ。
中にはおにぎりと湯を待つ味噌汁。
直ぐにポットにお湯を沸かし、注ぎ込む。
「さっき、顔をニヤけてたわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・気のせいだ。俺はこれを食べたら部活に行く。戸締りは任せた。」
海が了解と言いながらおにぎりを頬張った。
錦戸は準備に取り掛かる。
幸いにも昨日は近く(バスで15分ほど)の温泉に入ったため体はきれいだった。
体操服に着替え、カバンにはタオル、飲み物、財布に定期。さらに夏休みの宿題の一つが入っていた。
「じゃ、俺はもう出るよ。」
「いってら!」
「はいはい。」
それぞれがそれぞれの送り方をする。
駅まではここから15分。
歩いた。
丁度中腹エリアで一度とまる。
「ちゃんと、国道には車が走っているな・・・?」
遠くに見える道路には今日もたくさんの車が走っている。
11:33
【4番ホームに電車が参ります。黄色い線の・・・。】
電車が来る合図が聞こえる。トンネルから光が差し込み電車が姿を現す。
定刻どおりにやってきた電車に乗り込む。
それを確認した車掌が早々に発車させた。
ブーブー。
電車で学校の最寄り駅まで50分。それを目前に一通のメールが届いた。
勿論乗車マナーに反さない様にマナーモードの状態だ。
最近はメールを使わないことが多くなり、きっと広告メールの一つだろうと考え既読にしようとする。
すると、メールの重さは0.1キロバイト。
―珍しい。
しかも知らないメールアドレスだ。
誰かのメールアドレス変更に違いないと半ば勝手に決めつけメールを開ける。
2014/07/31 11:35
差出人:gaits-bs@dcmooo.ne.jp
タイトル:無題
内容:始めまして海草ちゃんねるにいたゲイツです。あなたとは一度話してみたくメールを送りました。
―げ、ゲイツだと!?だが、何故俺のメアドを!?
ゾゾッと監視されている様な感覚。
だが、錦戸自身ゲイツと呼ばれる男には話をしたくて堪らなかったといえば嘘になる。
「あなたは誰ですか?」
とメールを送信する。
―き、来た!
ブーブーと受信音。
『私はオールニューネット社の社員でした。そこでアルター204の管理をしていたのですが、アルター204の隠された機能はご存知ですか?』
『確か特殊なCPU・メモリセットが搭載されおり、未来の予測が可能だとか・・・?』
『はい。そこでビットソフトが招いた未来を知りました。』
『あの、俺達にもそういったものがあるんですけど。』
『アルター204の様な・・・?』
『はい。』
『・・・今は何も言いません。ですが、未来は安易に変わります。くれぐれも間違った方向に使わぬように・・・。』
□■
16:50 バス停前。
「くっそ~あのクソキャプテンくたばれ!」
一人のチームメイトが呟いた。
錦戸の所属する男子バドミントン部は一言で言えばアクが強い。
誰しもが強いアイデンティティーを持っているとも言えた。おかげで部活内は荒れ放題に荒れている。
そもそも人数が20人近くと非常に多いのも原因の一つといえた。
「あいつ、先生に気に入られてるから変えるのも無理だろう?」
今のキャプテンは本当に人気が無い。それは錦戸ですら例外で無かった。
すると、学校側から二人の女子が歩いている。
―あ!
と錦戸は用事を同時に思い出す。
「澤田さん!」
「?」
「これ。渡しとく。返すときはまたトレインで言って。」
「あ、ありがとう。」
「おう。気にすんな。」
錦戸は緊張7割程度で用事を済ませる。
渡した途端に背中を向けたがそれでも澤田と隣にいる彼女のチームメイトの視線を背中で感じ取っていた。
17:30 開発所。
流石に誰もいないだろうと覗き込んだ開発所はしっかりと鍵がかけられていて錦戸も流石に自宅へと戻る。
親はある程度を理解を見せてくれたから安心していた。
夕食、風呂を済ませ3日ぶりぐらいの自室へと入った。
錦戸は直ぐにベッドにもぐりこむ。
そして、直ぐに強い眠りへと入っていった・・・。




