episode10 戦慄のプログラム
2014
08
12
13:30
「待ってくれ・・・!」
俺は加藤を追う。
※ここからは主人公 錦戸視点で物語を展開していきます。
□■
俺が加藤に自身がアルタイルを用いて導かれた答えを教えたのはほんの数分前のことだった。
いつものように遊びに来た加藤は深刻そうな俺を少し笑ったがいつもと違う空気から直ぐに何かを察知したらしい。
見えた予知に加藤は少しも反応を見せず、その場から去ったのが・・・丁度今のことだ。
あの日以来俺はわざと皆が開発所に来ない様に仕向けた。
実家にも手を回して家出という形にした。つまり、あの予知を見て以来俺は開発所で生活していた。
「加藤・・・。」
問題は加藤だけではなかった。澤田も然り・・・。
俺は15時手前には名西高校の校門をくぐっていた。
2014
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15:05
女子テニスのマネージャーの澤田を捕まえるのは割りと容易。
実際俺と澤田の交流はよくある。それが恋仲に発展することが無いのも事実ではあるが。
「後一時間程度か・・・?」
終わる時間を勝手に査定し俺は昇降口の自販機の前に立った。
喉が渇く。
幸いにもいまところまた連中を見かけることは無い。
アルタイルの存在を知っての行動であればこちらが察知しやすいと考えたのだろう。
しかし、俺には逆の考えもある。
今までは行動の中にアルタイルという未来観測機を利用して未来を変えてきた。
だが、今度は連中にアルタイルという存在がバレていたら・・・。
もしかするとアルタイルの限界を受け入れなければならないのかもしれない。
「しまった・・・ブラックのめねぇんだ・・・。」
俺はついつい購入してしまったブラックコーヒーに吐きそうになる。
「あれ?」
そんなとき声をかけられた。
「あ、澤田。」
「今日は部活無かったやろ・・・?」「あ、あぁ。悪いがこの後時間あるか?」
「え?まぁ・・。」
どことなくぎこちない空気が流れる。
なんだか告白前の様になっている。
だが、今はそんなことではない。アルタイルの予言は当たる。
16:20
「それで・・・?」
部活を終え、部活で作った服を纏った澤田が再び昇降口に現れた。
俺は「済まないが一緒に着てくれ。」と促すと彼女は首を一つ縦に振った。
今思えばこれもミスの一つだったかも知れない。
俺達は歩いて30分もかかる駅へと向かう。
俺が一向に話をしないが故か彼女も何も言わなかったがその顔はどこか不満と不安が過ぎっている。
「あ・・・あの・・・私帰る!」
澤田はそう言うと俺が止めるのを無視し国道を横切る。
丁度直後にバスが停まり彼女はそれに乗り込んでしまった。
「何やってるんだ・・・!」
澤田に対するものなのか自分に対するものなのか・・・思わずそんなことを言ってしまう。
その隙にバスはとっとと長い坂を下っていった。
18:00 開発所。
結局あの後からは澤田とトレインでやり取りすることも不可能となってしまう。
最悪当日までに彼女の家を把握していれば・・・。
そんなことも考えた。
この状況下、俺自身としてはアルタイルに希望を託すことが出来なかった。
「くっそ・・・。」
俺は疲れから眠りについてしまう。
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12:00 開発所
どうやら眠りについていたようだ。
しかし、相変わらず何かが一変した様子は無い。例の予言を見てから早3日。
澤田とは連絡も取れない。さらに加藤に至っては行方不明という状況。
「・・・どうすれば・・・。」
俺は思い立ってパソコンを起動させた。
そして、机の引き出しから去年の年賀状の束を取り出す。
一枚、また一枚とめくる。
澤田眞子
その文字を確認し抜き取る。
カタカタと書かれた住所を地図サイトに打ち込む。
「電車で乗り換え一回で30分。徒歩5分・・・。部活の予定表は・・・・っと。」
俺はロッカーに貼られた各部活の予定が一斉に書かれた紙に目をやる。
「今日は部活が有で明日は有・・・か。明後日が無だな?」
―やはり明後日・・・・か。それのが逃げる幅を増やせそうだ。
問題はどの場所で澤田が死ぬか。これが問題だった。それを知りさえすれば回避の可能性も見えてくる。
しかし、何度試しても場所が提示されない。
14:20 澤田宅前
「下見な。」
俺は変な言い訳をする。
―そう下見である。
実際今は澤田はいないし、きっと昨日の二の舞であろう。
学校に行っても彼女は俺に警戒をするだろう。
2014
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澤田・加藤デッドエンド日
俺は澤田の家の前にいた。
彼女の今日の予定はショッピングモールへ行く。アルタイルで調べ済みだ。
時間は18時デットエンド。
今の時間は10時。
彼女は昼から向かう。その前から俺は既に張り込んでいた。
13時までの3時間。俺は常にあたりを警戒していた。
しかし、連中の特徴でもある黒服や黒塗りの車は存在しない。さらにこの二日と違う人間の姿や車も確認出来ない。
つまり、彼女は出かけ先で殺される・・・。
「問題は加藤か・・・?」
俺は加藤の所在は結局現在までつかめていない。
時間とは呆気ないものであっという間に3時間は過ぎた。
13:30 ショッピングモール。
俺は未だ澤田の後ろにいる状態。
13時丁度にショッピングモールに到着。親友がすぐその直後に現れた。
ともに行動し今はフードコートでジュースを飲んでいる。
俺は昼飯を食べがてら賑わいの中心ともいえるフードコートで彼女を見ていた。
ここにも連中らしき姿は無い。しかし、もしかすると私服の可能性もある。
しかし、無駄にガタイのよさそうな人間もいない。
14:20 ショッピングモール
服の店やあまり男の入ることの無さそうな店を二人で見て回っている。
15:30 広場
「でね~」
「ははは。へぇ~」
二人はここ1時間近く広場で話を続けている。
ショッピングモールというだけあってまわりはあまり他の店が無い。
それが証拠に一通り見て回った後から二人は今の状態に至っている。
「残り・・・3時間・・・。」
俺は携帯の時計を見る。
―その内帰るであろうが・・・そこからが問題だな。
と言っているうちに二人は立ち上がる。
バス内も電車内も二人は暫く一緒だった。
俺はその間彼女たちに見つからないか心配でもあった。
帽子を深く被っていたのが功を期したらしい。
17:40 駅
「じゃねー。」
「バイバイ~。」
電車内でそんな会話があった後、澤田は電車を降りる。
俺も別車両から静かに降りる。そこで上着を一枚脱ぎ、帽子を変える。
17:43 帰り道
時間は一刻と近づく。
―何も無い・・・のか?
しかし、その望みは直後に消える。
―これは・・・。
後ろに感じる何か。それを俺は知っていた。
「錦戸直樹。付いてきてもらうぞ。」
「逃げるぞ!!!」
俺は走り出す。そして、直後に澤田の手を取る。
「ここで死なせてたまるか・・・。」
「な、何!?」
突然のことに流石に澤田も驚いた表情である。
普段から走っていることだけはある。あまり疲れを感じず走ることが出来る。
「い、き止まり・・・・!?」
この辺の土地をあまり知らなかったのが最悪の結末を迎える。
そこで、銃を持った一人の女が姿を現せる。
しかし、俺はその姿を見たことがあった。
一度ではない。
何度も・・・。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も幾度と無く。
「加藤・・・・ここで・・・・・何をしている。」
時計の針はまた一周回る・・・。
「警告はした筈・・・。」
加藤はそう言うと銃を俺達に向ける。向けたのは・・・俺でなく澤田のほう。
「あの紙・・・お前が書いたのか!!」
その怒鳴った問いかけに加藤は頷く。
「一緒に来てもらうわ。」「断る。」「じゃあ、どうなるか分かってるわよね・・・?」
彼女の人差し指は小刻みに震えている。
ピリリリリリリリリリリ!!!!
デッドラインを示す音。
「ッ!?」
「撃てよ!!撃てるもんならな!?」
そこで俺は辺りがおかしな状況になっていることを感じる。
―せ、セコイア・・・・!!
俺は確かにその感覚を知っていた。
しかし、自我のあるセコイアは初めてだった。
―ッ!?
イメージが頭の中に流れ込む。
これだ!
「変われっれぇぇぇええええ!!!!」
と、同時に加藤が引き金を引く。
パンッ!!
住宅街も想定してか、サプレッサーに圧縮された銃弾をその音を最小限までに下げる。
「がッ!?」
俺はその場に跪く形となる。
「さ、わだぁ!!早く・・・・早くぅ・・・逃げろ!!!」
痛みを堪えながらそう伝えると澤田心配そうにその場から走り出す。
一方撃った本人はただ、ひたすらに「私がミスした・・・。」と呟いている。
「何してるんです!?」
突然現れたのは中森。
―どうして、中森が・・・・?
「びょ、病院に!」「待ってくれ・・・・。」
俺は覚束ない指使いでスマートフォンを操作する。
2014/08/16 17:20 澤田死亡▼
20XX/XX/XX XX:XX 加藤死亡▼
「延びている・・・だけか。」
「早く行きますよ!」「闇医者を知らないか?一日で・・・回復出来ないと・・・澤田が死んでしまう・・・。」
その言葉の後、俺は意識を失う。
2014/08/15 23:20 どこか。
「はっ!?」
俺は直ぐに身を起き上がらせた。同時に来る痛みに思わず肩を触る。
「そうか・・・。撃たれたのか・・・。今は・・・何時だ?」
時計は11時20分を差している。
「まだ、大丈夫か・・・。」
「どうですか?体調は・・・。」
「大丈夫だ。」「残念ながら、暫く右腕は使えません。」
「俺は左利きだ。」
中森は小さく笑った。
「さて・・・どうしたものかな。」
俺は携帯を取り出す。そして、メール画面を開き気を失う直前に見た予言をもう一度見た。
―期限は一日も無い・・・。
明日の午後5時20分に死亡する澤田の死の回避。
俺はその答えを懸命に探した。しかし、俺が予測、予測して行動すればそれだけ回避の確立は下がる。
だからといって俺に冷静な判断が下せるか・・・。それも難しかった。
「ねぇ。」
「・・・・。」
「ねぇってば。」
「ん?」
俺はそこで中森に話しかけられていることに気づく。
「アルタイルで前に同じ質問したことあります?」
「その時は・・・・分からないと来た。」
「それって、つまり今までの行動に理由があったりするのでは?」
唐突にそんなことを言われた。
俺は少し思考が止まる。同時に奇妙な違和感を覚える。
今までの行動。アルタイルを使って行動してきた結果の中にはいつも何かしらの形でBSが関与している。
つまり、未来の「大きな分岐点は・・・俺が担っている?」
「そうです。」
「何故、そんなことを言う?」
「だって・・・私は・・・・ゲイツなんですもの・・・知っているに決まっています。」
「お、お前・・・・。」