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♢♢♢童話集♢♢♢

おくるみ地蔵

作者: 犀月靖緒

むかしむかし、ある村に、一体のお地蔵様がいた。

そのお地蔵様は、子どもたちの笑い声や、楽しそうに遊ぶ姿を見るのが好きだった。

お地蔵様は村のあぜ道のはずれで、長い間、子どもたちの幸せを守っていた。



♢♢♢


お地蔵様のおかげで、村は長らく平和だった。それはいつまでも続くかのように思えた。

しかし苦しい時はお地蔵様に手を合わせていた村人も、平和や幸せに慣れてしまったのだろう。

そのお地蔵様はいつしか忘れられ、冬の落ち葉の中に埋もれてしまった。


お地蔵様が落ち葉に埋もれてからというもの、村にはひどい飢饉がおきて、子どもたちの多くが幼いうちに、次々と命を落としていった。

村人たちはいろいろ手を尽くしたが、飢饉はおさまらず、子どもたちは助からない。

村には小さな子どものお墓が、たくさん作られていった。



♢♢♢


そんな日々が続いた、ある日のこと。

ひとりの女が長い旅をして、その村にたどりついた。


それはまだ若い母親で、腕にはおくるみを着た赤ん坊を抱いていた。

女はあぜ道のはずれで、落ち葉に埋もれているお地蔵様を見つけた。


女は両手で丁寧に落ち葉をとりのぞき、埋もれていたお地蔵様を助けだした。

それから、その村のいろいろの、お墓を見て歩いた。


そのお墓のほとんどは、村の幼い子どもたちの命が尽きて、埋められているものだった。

女はたくさんの子どものお墓を見てまわると、もういちど、お地蔵様のところにやってきた。


女はやっぱり、腕におくるみを着た赤ん坊を抱いていた。

そのおくるみは女が編んだもので、袖の部分は、毛糸が足りなくて編めなかったのだった。

女の腕のなかの赤ん坊は、おくるみを脱がされても、ちっとも動かない。

赤ん坊は、とっくに死んでしまっていた。

女は、死んだ赤ん坊を抱いて、旅をしていたのだ。


そして死んだ赤ん坊のおくるみを脱がせると、あぜ道のはずれのお地蔵様に着せてあげた。

そして女は手を合わせて言った。

「お地蔵様、お地蔵様。どうか、この村の幼い命たちをお守りください」


たくさんの子どもたちのお墓を見て、女はやっと、自分の死んだ赤ん坊から、おくるみを脱がせてあげることができたのだった。


お地蔵様は、女におくるみを着せてもらって、また心があたたかくなった。

その若い母親の願いを、叶えてあげたいと思った。



♢♢♢


それ以来、村の飢饉はおさまり、子どもたちも元気に育っていった。

今日も地蔵様はおくるみを着て、あぜ道のはずれで、ほほえんでいる。



♢♢♢


それからというもの。

村の人々は、新しい命が産まれると、この子が元気に育ちますようにと、あぜ道のはずれのお地蔵様に手を合わせて願った。

そしてお地蔵様とおなじように、産まれた赤ん坊に、おくるみを着せるようになったという。

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