表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/13

【第9話 成瀬の真意、揺れる決意】

成瀬からの突然のメッセージ。

避けられない対話が、悠斗の胸に重くのしかかる。

梨央との関係を守るため──彼は、成瀬の言葉と向き合う。

 夕食後の暗い部屋。

 机の上に置いたスマホが、静かに振動した。


《真壁、今度ちょっと話せないか? 梨央のことについて》


 短い文章なのに、指先が一瞬止まった。

 何度読み返しても、文面は変わらない。


(……逃げたらダメだ)


 頭ではわかっているのに、胸の奥に冷たいものが落ちてくる感覚があった。

 しばらく迷った末、深呼吸をして送信ボタンを押す。


《いいよ。明日、放課後に》


 送信済みのマークがついた瞬間、心臓が一つ、大きく脈打った。


* * *


 翌日。放課後のチャイムが鳴ると、教室は部活へ向かう生徒たちで一気に賑やかになる。

 その喧騒を抜けて、俺は約束の場所へ向かった。


 校舎裏。

 風が通り抜けるその場所には、ベンチと自販機が一台。

 成瀬はすでにそこにいた。

 制服のジャケットを脱ぎ、ペットボトルの水を握っている。


「悪いな、急に呼び出して」


「……で、話って?」


 成瀬は少し黙り込み、ペットボトルをベンチに置いた。

 そして、まっすぐ俺を見た。


「お前、本気で梨央のこと……好きなのか?」


 予想していたはずの質問なのに、喉の奥がひどく乾いた。

 うまく声が出ない。


「付き合ってるんだろ?……いや、“契約”なんだっけ」


 その単語に、胸の奥が小さく波立つ。


「俺、知ってたよ。梨央から聞いた」


「……そうか」


「でもな、それがいつまで持つんだって、正直心配してる」


「心配?」


「梨央ってさ、他人に合わせすぎるとこあるだろ? 自分の本音、隠してまで。

 あいつ、笑ってるときほど無理してることあるんだよ」


 成瀬の声には、からかいの色はなかった。

 ただ、真剣な眼差しだけがそこにあった。


「お前が嫌なやつじゃないのはわかってる。

 でも、もし梨央が傷つく未来しかないなら……俺は止めるつもりだ」


 静かな言葉なのに、胸にずしんと響く。


* * *


 そのあと、しばらく沈黙が続いた。

 校庭から聞こえる部活の掛け声と、ボールの弾む音が、やけに遠くに感じられる。


「……俺は、本気だよ」

 やっとのことで口を開く。

「でも、まだちゃんと……言えてないだけで」


 成瀬は少し目を細めた。


「だったら、早く言ったほうがいい。

 あいつ、待ってくれるタイプじゃないから」


 そう言って、立ち上がる。

 その背中を見送りながら、俺は拳をぎゅっと握った。


* * *


 帰り道。

 街灯に照らされた歩道を、イヤホンもつけずに歩く。

 成瀬の言葉が、頭の中で何度もリピートされる。


(俺は……本気なんだよ)

 だけど、それを口にする勇気がまだ足りない。

 悔しさと情けなさが入り混じる。


* * *


 夜、自室で課題を広げたまま、ぼんやりとスマホを眺めていたときだった。

 画面が光り、通知が表示される。


《明日、少し話したいことがあるんだ》


 梨央からだった。

 短い文章なのに、心臓が早鐘のように打ち始める。


(何を……話すつもりなんだ?)


 画面を見つめながら、答えのない問いが胸の中で膨らんでいった。

第9話では、成瀬の本音を通して、第三者の視点から見た梨央の危うさを描きました。

悠斗は「本気」という言葉を胸に抱きながらも、まだそれを梨央に伝えられていません。


次回、第10話では梨央が切り出す「話」がふたりの関係を大きく動かします。

どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
成瀬、けっこういいやつっぽいですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ