92 ヤヒスダンジョン⑦
ヤヒス達一行は遂にヤヒスダンジョンの最下層に到達して、ドラゴンと会敵、一時は戦闘状態になったものの、ヤヒスの判断で、ドラゴンとの戦闘を中止することにした。
「さぁマスターよ、ワシに何を望む」
ドラゴンはダンジョンマスターであるヤヒスに従うと申し出てきた。
「・・・特に、なにも」
ヤヒスがぽつりとつぶやいた。
「え?ワシは何でも言うことを聞くぞ?どこかの国を亡ぼせと言われたらそうしよう、その後王座に座らせるのもやぶさかではないぞ?」
ドラゴンのフィスは焦ったようにまくし立てた。
「君が人間に危害を加えない、それだけで十分だよ」
ヤヒスがそう言ったあと、ヴィーシャが割り込んできた。
「わかったわ、わかっちゃった、コイツはこのフロアに縛り付けられているのね、だから言って欲しいのよ、一緒に来いってね」
「そうなのかいフィス?」
フィスはそっぽを向いて黙っている。
「ふぅ、連れて行きたくても大きすぎるよ、だいいち目立ちすぎるし大騒ぎになるよ」
「な、ならば人間の姿になろう、盟約でマスターの命令が無ければドラゴンになれぬようにすればどうだ?」
フィスは焦っているようだ。
「うーん・・・盟約ってどうすればいいの?」
ヤヒスは話を進めて行く。
「ワシの額にある石に触り命令すればそれで完了だ」
フィスは顔を近づけてくる。
ヤヒスは額の石に触り叫んだ。
「マスターであるヤヒスが命じる!人型になりて旅に同行せよ!」
その瞬間、ヤヒスとフィスはまばゆい光に包まれそれはすぐに収束して消えた。
そこには10代前半にしか見えない少女が立っていた
ワンピースを着て髪の毛は赤で肩に着く程度、身長もパムよりも小さい。
「・・・随分と可愛らしいことになったわね、と言うかメスだったのね」
ヴィーシャがしゃがみ込んで顔を覗き込んでいる。
「ワシはようやく成人期にはいったばかりだからな」
フィスはそう言ってヴィーシャを覗きかえす。
「青年期に入ったって何歳なの?」
パムが興味深そうに聞いている。
「なに、ほんの200年程度だ」
「さすがドラゴンですね・・・前の王国くらいから生きているのね」
「この中では間違いなく年長者になるんだが・・・見た目が」
ヤヒスが困った顔をしている
「ワシもいまいち不満が残るが、マスターに同行できるなら些末なことだ」
ヤヒスはさてどうしたものかと辺りを見回すと、折れた大剣が転がっているのが目に入った。
ヤヒスは大剣のほうへ歩んでいった。




