90 ヤヒスダンジョン⑤
ヤヒス達は最深到達地点を超え地下8階まで到達していた。
何度かヴィーシャとヤヒスの剣が折れて、そのたびに結合で修復していた。
結合で武器防具を修復すると攻撃力や耐久度に数値がプラスされるのだが、どのくらいの強さになっているのか確認もしなくなっている。
「次にくる様子だわ」
ヴィーシャが剣を構えて言う。
「だね、デカい足音がする、ゴーレムに似ているな」
ヤヒスがそれに答える。
しばらくすると装甲を身体にまとった巨人がゆったりと現れた。
「アーマードゴーレムですね」
ミードリが眼鏡をずらす。
「ふぅ、剥離!」
ヤヒスの剥離スキルでアーマードゴーレムの装甲を外すと、ドスンと言う重い音がした。
「アーマー剥がしちゃえばただのゴーレムよ、ミードリ」
その言葉を受けてミードリが火炎魔法を放つと、魔物は塵となって消えた。
「もう自分がどれだけの力を持っているかよくわからなくなっているわ」
ヴィーシャは汗をぬぐう。
「同感だ、6階からは休みなく魔物が出現している、それまでフロアボスだったと思われていたのが平気で出てくる」
ヤヒスは辟易した様子で足元を見ている。
そこから大分歩き、階段を降りたり上がったりと、方向性の見えない通路を行き、何度も魔物を倒していった。
「・・・この感じはフロアボスかな」
ヤヒスがつぶやく。
「そうね、格下の魔物が出てこなくなったし天井が高くなってきている。
ヴィーシャはそのつぶやきに返事をする。
彼らは何層も降っているうちに、ダンジョンのパターンを把握して、近道を選び、冷静に魔物を倒して行けるようになっていた。
フロアに出ると巨大できらめくクワガタムシが待ち構えていた。
「ミードリ、あれはなに」
ヴィーシャがなげかける。
「私の記憶にはありませんが、ミドルビートルの上位種でしょうか」
「メタルビートルかな」
彼等には余裕さえ見られる、それはひとえにヤヒスの剥離スキルのおかげだ。
「はい、剥離!」
ヤヒスがメタルビートルに剥離のスキルを使用すると、魔物の外骨格がバラバラになり崩れ落ちた。
ヤヒスはそのまま歩いて行き、塵になった魔物の魔石を拾い上げた。
「ヤー、潜って何日目になるかな」
ヤヒスの問いにヤーが答える。
「はい、マスター32日目になります」
「やれやれ、新しいスキルを身に付けたし、宝物も手に入れたけど、かさばりすぎてもう捨ててる状態なのよね、とにかく地下12階まで行くことしか考えてないわ」
ヴィーシャの一言に全員がうなづく。
あとどのくらいで最深部にたどり着くのかは全く分からなかった。




