89 ヤヒスダンジョン④
「うわああああ!!!
「しぬしぬしぬしぬぅ!!!」
ヤヒス達は全速力でダンジョンの通路を走っていた。
「そこの窪みに飛び込んで!!」
ヴィーシャが叫ぶと全員窪みに飛び込む。
その直後に走っていた通路を轟音と共に火炎が走り抜けていった。
「ヤバかった・・・」ヤヒスがへたりこむ。
「ミードリ!どうして最初に教えてくれなかったの!」
ヴィーシャがミードリに問いかける。
「話す前に斬りかかっていましたから・・・」
「うっぐ・・・」
四人はファイヤーボムと言う魔物と戦っていたのだが。
その魔物は、衝撃を受けるとカウントダウンを開始し、ゼロになると爆発する性質を持っていた。
ヴィーシャはいきなりその魔物に斬りかかったため、カウントダウンを開始して、今に至ると言うわけである。
「しかし、これだとこの先進めないよ」
ヤヒスはため息をつく。
「魔法で何とかならないのミードリ」
「何もしなければなにもおこりません、普通に歩いて通り抜ければ良いのです」
「前から思っていたけど、ミードリは色んなことを知っているね」
ヤヒスが座り込んだままみ言葉を漏らす。
「この子、一度見たり読んだりしたものはほとんど覚えちゃうのよ」
ヴィーシャがミードリを人差し指で指しながら言った。
「えぇ!それってすごいんじゃ、何かのスキルなの?」
「スキルではないんですよ、ただ物覚えがいいだけで」
ヤヒスとミードリはやり取りしている。
「ま、じゃあそのままファイヤーボムの横を無視して通り過ぎていきましょう」
ヴィーシャは立ち上がってそのまま歩いて行った。
確かにファイヤーボムは近付いても何もしてこず、その場に漂っているだけだった。
ただ、その目つきがするどく、歩くのをジッと眺めてくるので非常に居心地が悪い。
「どれだけいるのよ・・・」
ヴィーシャがこぼしていると、パムが答えた。
「これだけいると一体が爆発したら誘爆でとんでもないことになるね」
全員が歩みを止め、硬直して青ざめた表情になる。
「やめてよそう言う振りみたいなの・・・」
ヤヒスは固まっている。
全員またゆっくりと歩み出した。
ファイヤーボムのいる通路を抜けるとらせん状で深いくだり階段にたどり着いた。
「長い階段ね・・・」
ヴィーシャがあきれた顔で覗き込んでいる。
「今日はここで一泊するかい?」
ヤヒスがそう言うと全員賛同したので「宿泊形態」で部屋を出して休息を取ることにした。




