88 ヤヒスダンジョン③
ヤヒスダンジョンに潜ってから4日が経過していた。
大したトラップも無かったが、起伏とフロアの広大さと、時に一人がやっとの通路になる形状は神経を圧迫していた。
「まだフロア2なんだよな、ヤー、最深部の階数と、どの階層まで攻略されているか教えてくれないか」
「フロアは12まで、攻略はフロア5までです」
「12もあるの、単純計算48日もかかるの・・・?」
ヴィーシャが辟易とした表情になった。
「フロアが深まれば魔物やトラップも強力になるでしょうから、もっとでしょうね」
ミードリは冷静に答えた。
「もっと、ペースを上げた法が良いのかな」
パムは心配そうな顔をしている。
「せめてトラップ感知と解除のスキルがあればなぁ」
ヤヒスが歩きながら言うとヤーがそれに答えた。
「ございます」
「え?」
「マスターはどちらのスキルも取得されておられます」
確認して見ると確かにどちらも取得していることが分かった。
「どうして教えてくれなかったの??」
ヤヒスの質問にヤーが返す。
「聞かれませんでしたから」
「・・・いや、何と言うかその、はからいみたいなものってあるじゃないか」
「もうしわけありません」
「他にもなにかこう、スキル的なものってない」
「管理者権限、ダンジョンウォークがございます」
「どういった効果なの?」
「ダンジョンを迷わず歩けます」
「なにそれ大事じゃん!?」
「ちなみにダンジョンウォークを使用されていなかった分のロスは約一日になります」
「おぉおおおおおお・・・」
ヤヒスは膝をついている。
「ヤヒス、そのダンジョンウォークを使うつもり?」
ヴィーシャが言ってくる。
「え?そのつもりだけど」
「だめよ、それじゃあただの散歩だわ、私たちは冒険に来ているのだし、ダンジョンの攻略そのものがレベルアップにつながるのよ」
「私もそう思います」
ミードリが賛同してきた。
「そうか、そうだったな・・・ところで今日はもう休んで明日早くに出立にしないか」
「賛成、ペースが落ちているからこのまま進んでも大した成果にならないわ」
ヴィーシャはそう言った。
「じゃあ、ヤー宿泊形態」
「かしこまりましたマスター」
石壁の中から動く音がして、入口が開き、ダンジョン内に住居が発生した。
全員が中に入ると扉が閉まり、外からはただの壁にしか見えなくなった。
「宿泊形態」
を使用すると、ダンジョンのどこにいても住居が現れ休息することが出来る。
宿泊形態があるからこそ、ダンジョンでの疲労や、持ち物の軽減につながっているのだ。
「ヴィーシャ、宿泊形態は使い続けていいのかい?」
「う・・・こ、これくらいは良いでしょう」
ヴィーシャは素知らぬ顔をした。




