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86 ヤヒスダンジョン①

魔物の行動が活発化し、幹部なる存在が明らかになったことを皮切りに、各地で魔物の出現状況調査が始まった。


まず辺境での活発化が認められ、北方では相変わらず出城が建設され、冒険者パーティーが一部をつぶすと言う状況が見られた。

そのため、辺境と北方に向かう冒険者が増加して、中央は少ない空洞化現象が発生した。


「いまこそヤヒスダンジョンに潜る時だわ」

ヴィーシャが椅子を軋らせながら言う。


「どうして今こそ何だい」

ヤヒスが質問する。


「冒険者が大勢ソヴィリバーレを離れているわ、当然ダンジョンに潜る人数も減っている、あなたのダンジョンなんだから今が行き時だわ」

ヴィーシャがそう言うとミードリもそれに賛同するようなことを言った。


「ふぅ、明日出発するんだろ?」

ヤヒスがため息をつくとヴィーシャが言った。

「あら、なぜわかったの?」

「いつものことだろ、だから俺は市場で食料を調達してくるよ」


そう言ってヤヒスは出て行った。


翌日の朝からダンジョンに向かった。

元は下水道の入り口であった階段を降りて通路に降り立つ。

そのとたん声が聞こえた。


「おかえりなさいマスターヤヒス、ダンジョン形成をいたしますか」

「うわ、なに?マスター?」

「はい、ダンジョンマスターヤヒス様、あなたはダンジョンを自由に形成する権限を持ちます」

「どういう事なの?」

「いま、表示をします」

「なんだこれ!文字とか絵が出ている」


そんなやりとりをしている中に、ヴィーシャが割り込んでくる。

「ちょっと何独り言いってんの?大丈夫?」


「声は俺にしか聞こえてないの?」

「はい、パーティーに音声共有いたしますか」

「全員聞こえるってことなの?」

「はい、その通りです」

「じゃあお願い」

「音声をパーティーで共有」


その声が聞こえたとたん、全員が騒ぎ出した。


「この声なに?」

ヴィーシャがヤヒスに聞いてくる。


その声に反応して音声が答えを出して来る。


ヤヒスにはダンジョンを自由に変化させ、トラップも宝物も自在に配置できること、マスターであるヤヒスには魔物もトラップも反応せず自由に最下層に行けること、ほかこまごましたことだった。


「安全にダンジョンをただおりるだけなんて駄目よ、何の訓練にもならないわ」

ヴィーシャが声を張る。


「うん、俺も賛成だ、今までと同じで自動形成で」

「かしこまりました、幸あらんことを、マスターヤヒス」


四人はダンジョン内を少しづつ降りて行った。

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