73 魔王の出城④
「魔王軍の出城を攻略・・・」
受付嬢は煤で汚れた魔王軍の旗を手にしてつぶやいた。
「それより報告があるわ、魔王軍の出城が他に五つ、建築中のものが二つ確認できたわ」
辺りがざわめく。
「勇者パーティーを呼んで攻略させないともっと出城が増えるわよ」
「どの勇者パーティーも遠出していてすぐにと言うわけには・・・」
受付嬢が困り顔をする。
「速い方が良いと思うわ、それと、これでB級パーティーに昇格で良いのかしら?」
「ええ、はい、おめでとうございます」
ギルド内から声が漏れる。
「やったなヤヒス」
「次はA級、手強いぜ」
「姉ちゃんたちもお疲れ」
ヤヒスはギルドの連中に手を振りながら外に出た。
街路を歩き外周壁の辺りに向かい、パーティーホームにたどり着いた。
ヤヒスはすぐにお茶を入れ始める。
「次の出城攻略クエストを受けなくてよかったのかい」
ヤヒスが言うと、ヴィーシャが答えた。
「いいのよ、ああいう状況のために勇者パーティーなんてのがいるんだもの、それに私たちは一つ陥落させたわ、Eランクだった私たちにしては十分なことをしたのよ、あとは上級パーティーが対応すべきね、それに下のランクが目立つのも良くないわ」
「そうですね、うちのパーティーはヤヒスさんがいるだけで十分目立ってますから」
ミードリがヤヒスに言う。
「えっ、おれがかい?」
ヤヒスは意外そうな顔で答えた。
「自覚が無い、レアスキル持ち、ダンジョン発見者だよ」
パムが手でテーブルを叩いている。
「あー・・・そうか、でも偶然みたいなところあるからね」
「それよりももう夏が近いわ、ワアイの町に行ってビーチで遊ぶのはどう?ここ一年私たちは十分トレーニングを重ねたわ、出城を陥落させて結果も出した、少しは骨休めするべきよ、ミードリ余裕はどのくらいある?」
「そうですね、二ヶ月くらいは何もしなくても良い位の余裕は」
「そんなに貯まっていたのか・・・」
ヤヒスは口を開ける。
「まず、家賃がかからない」
パムがヤヒスを見る。
「そこよね、あなたが家持ちじゃなければ割とカツカツよ、感謝してるわ」
ヴィーシャが笑いかけてくる。
「はは、どういたしまして、元々家族がここに来た時に泊まれるように買った物だから、あいているし使った方が良いってもんさ」
ヤヒスはお茶を運びながら笑った。




