71 魔王軍の出城②
ヤヒス達を背に乗せたチヌックは魔王軍の出城に向かって急降下していった。
それを見つけたオークの兵は状況が読めず固まっている。
そこをめがけてチヌックは火炎を吐いた。
城門の兵士を塵に変えて、その後は城壁に展開している兵士を円形に回りながら倒していく。
騒ぎを察知したオーク兵が数人、砦から走り出てくるが、それも一瞬で塵に変わった。
砦の中庭に降り立ったチヌックはすぐに飛び上がり、逃走する兵を火炎で処理していく。
「速攻!」
ヴィーシャがそう叫ぶとパムはシールドを三重に重ねミードリは砦の扉を火炎で焼き崩した。
ヴィーシャとヤヒスがそこに飛び込み左右に分かれた。
ヤヒスはすぐそこにいたオークの斧を切り返しで地面に落とし、そこから腹に剣を突き立てて顔まで蹴り上げる。
後ろにいたオークが突き出してきた槍を剣で反らし、それから腹に剣を刺して逆けさがけで切り上げる
そのままの勢いで通路をスライディングで曲がった。
予想通りオークが槍で突き立ててきたのでサイドに回って顔面に切っ先を突き立てる。
正面には敵がおらず、右手に部屋がある。
「パム!」
そう叫ぶと彼女は光の玉を部屋に投げ込んだ。
激しい音と光が部屋から洩れてくる。
ヤヒスが部屋に飛び込むと数人のオークが目を押さえたり転がったりしている。
パムのスタンボールの効果だ。
ヤヒスは手早く処理した。
一方ヴィーシャとミードリは通路に入ると火炎魔法を放つ、通路に沿って火炎魔法が疾走して、そのままオークたちを丸焼けにしている、それに合わせてヴィーシャは、左手にある部屋に飛び込み剣のスキル「疾風剣」で部屋中を切り刻む。
閉鎖空間では刃の疾風が躍る、疾風剣は効果的である。
彼女は角にくると叫んだ。
「私よ!」と叫ぶ。
「俺だ!」とヤヒスの声が聞こえる。
同士討ちを避けるためだ。
左右両方から敵が迫ってきたオークは天頂に向う穴にむかって、塊になって逃げだした。
「チヌーーーーック!!」
ヤヒスが叫ぶと天頂に炎が叩きつけられるのが穴から見えた。
チヌックが外に出たオークに炎を吐いたのだ。
炎が収まったのを確認すると全員で外に出た。
魔石は無くオークの死骸しか無かった。
ヴィーシャは魔王軍の旗を外して、竿から布をちぎり取った。
「変ですね、魔物が魔石にならない・・・」ミードリが魔物の死体を見てつぶやく。
中庭に出るとチヌックがおり、話し掛けてきた。
「外のオークは全て片付けました」
ヤヒス達は外に転がるオークの死体にも違和感を感じている。
「思ったよりもあっけなかったわね」
「チヌックもいたしね、帰ろうかチヌック」
「はい、主」
チヌックは返事を返してきて、それに対して全員笑顔になった。




