70 魔王軍の出城①
ヤヒス一行はチヌックの背に乗って空を飛んでいる。
地上を見下ろしてスピードを出して疾走するのは気持ちの良いものだ。
途中、地表に降りて昼食にする、チヌックはどこかに獲物を探しに行った。
準備が出来たら再び上空に戻り、ヤビスの生まれ故郷であるビソル村に向かった。
夕暮れ時には村のはずれに降り立ち、チヌックを鷹の姿に戻し、肩に乗せ、村に歩いて来る。
村が近づくと村民の誰かが気付いたようで走り寄って来る。
「おーーーいヤヒス!!」
「ボッコのおっちゃん!!」
「久しぶりだな、一年ぶりぐらいか」
「黄昏だっけか、パーティーのみなさん、お世話になってます」
ボッコのおっちゃんが挨拶をすると、銘々に頭をさげる。
「今日は泊って行くんだろう、なにかクエストかい?」
「魔王軍の出城を叩きに行くんだ」
「魔王軍!大丈夫なのかね」
「俺たちも成長したんだから大丈夫だよ」
「それならいいが・・・」
パーティーの全員がボッコのおっちゃんの後についてきて、ヤヒスの家に到着する。
「奥さん、ヤヒスが帰ってきたぞ!!」
ボッコのおっちゃんが叫ぶと母親が出てきて驚いた顔をする。
「帰るんなら手紙をくれればよいのにねぇ」
「急に決まったことなんだ」
そんなやりとりの中、パーティーの全員が家の中に入る。
今日は世話になること、全員元気にやっていることなど、ヴィーシャが説明した。
「でも、魔王軍の出城となると大変そうだけど・・・」
「お母さま、ヤヒスはこの一年で驚くほど強くなりましたし、各地のクエストで、感覚が鋭くなりました、心配いりません」
ヴィーシャがリーダーらしいことを言った。
夕食になり、田舎料理に満足すると全員早めに就寝した。
翌朝、母親から昼の弁当をもらい出立した。
「弁当って、ピクニックじゃあないんだから、母さんも変なところあるよなぁ」
ヤヒスがそう言うとヴィーシャが答える。
「あら、干し肉や携帯食なんかよりはずっといいわ、親心よ」
しばらくチヌックで飛ぶと、前方に岩で築かれた建物が見えてきた天頂に旗がさしてある。
「間違いないわ、あの旗はギルドで見せられた魔王軍のものよ」
ヴィーシャは振り向いて全員に言った。
「出城の形状は報告にあった通り、作戦通りいくわよ、そう言うとチヌックは出城に向かって急降下していった。




