63 モルゲン王国
「やはりモルゲン王国に行こうと思うの、私たちはいま成長期にあると思う、そこでお金を使うのは何も惜しいことではないと思うのよね」
ヴィーシャは朝食の席でそう言った。
「俺は賛成するよ」
ヤヒスがそう言うと他の二人も賛成してきた。
「いつ出かけるんですか?」
ミードリは眼鏡を拭きながら質問する。
「明日よ」
「いつものことだけど急だなぁ、じゃあ俺はこの後で携帯食料とか色々見繕ってくるよ」
「馬車の手配は?」
パムがそう聞くとヴィーシャが答えた。
「昨日に店で聞いてきたんだけど、しばらくは空きがあるそうよ」
「準備万端だな」
ヤヒスはあきれた調子でヴィーシャを見つめた。
翌朝の早朝、ヤヒス達は馬車で街道に乗り出した。
早朝とあってか馬車の往来はまだ激しくはない。
「えーっと大きな看板があるからそこを右・・・と」
ヤヒスは馬車をあやつりながら地図を見ている。
「うーんやっぱり五日はかかるね」
彼はそう言うと馬車に鞭を入れ、右の道へ進んだ。
朝から一日馬車に乗りっぱなしで、食事も馬車の中で取った。
夜になると野宿をして早めに就寝した。
3日ほど進むと山脈が見えてきた。
「あそこの峠を越えて進んでいくとモルゲン王国が見えるよ」
ヤヒスがそう言うとヴィーシャが言った。
「あの山脈、ちっとも近づいているように見えないんだけど、本当に進んでいるの?」
「ははっ、山脈はそう言う風に見えるんだよ、遠近感がおかしくなるんだね」
ヤヒスは笑いながらそう言った。
翌日、峠を越えるとモルゲン王国が見えてきた。
「見えてきたよー」パムがはしゃいでいる。
「ようやく見えてきましたね」ミードリも安心したような顔をしている。
「うん、早朝出発夜更けまで行動してきたおかげで、今日の日暮れには到着しそうな感じだね」
ヤヒスの言葉は本当で、夕暮れ時にはモルゲン王国の城門をくぐった。
ヤヒス達は、馬車を預け宿屋に向かう。
宿屋は簡素だが清潔そうでいい宿だった。
カウンターへ向かったヤヒスは、首からさげた物を宿の主人に見せた。
「こ、これは、ヘキサの欠片!お引き立てをいただきありがとうございます、料金も勉強させていただきますので、はい、ところで何泊されますか?」
「一か月でお願いします」
ヤヒスがそう言うと宿の主人は喜んだ様子で頭をさげてきた。
(こんなところでも通用するなんてヘキサの欠片はすごいんだな・・・本当にもらってしまって良かったんだろうか)
ヤヒスは疑問を抱きながら宿の階段を登った。




