62 ヘキサの欠片
大掃除を終えて次のクエストをどうするか検討していたヤヒス達は、とりあえず保留と言うことにして4日間の休暇を取ることにした。
大通りを歩いていたヤヒスは食材をいくつかみつくろい、ボロ市を見て周った後で冒険者ギルドに顔を出した。
「こんにちはー」
「おおヤヒスじゃねぇか久々だな」
「どこ行ってたんだ」
とギルドにたまっている面々が声をかけてきた。
「久しぶりだね、ドルガン王国に行っていたんだよ」
「おっ、あそこは魔石がきれいだったろう」
「うん、夜が最高だったし、温泉も良かったよ」
「温泉かぁ・・・俺たちもたまには行ってみるか?」
等と話しに花が咲いた。
「ところで、イエールはどこにいるかわかるかな?」
「ん?今時間なら酒場だな」
「ああ、朝酒とか言って良く飲みに行っているぜ」
「この時間からかぁ・・・イエールらしいな」
「ところでヤツに何の用だ」
「バルドルドって人から言付かってて」
「バルドルドってあの、鉄拳のバルドルドか?」
「鉄拳かは知らないけどバルドルドって名乗っていたよ」
「有名人だぜ、ドルガン王国じゃちょっとした顔だよ」
「へぇ、あの人そんなにすごいんだ・・・ありがとう、酒場に顔を出してみるよ」
大通りから外れて裏道に入り、まっすぐ進むと酒場がある、ヤヒスは重い木戸を押して中に入った。
イエールはカウンターで一人で呑んでいる。
「イエール」
ヤヒスが声をかけると彼は振り向いた。
「おぉ、どうした、久しぶりだな、どこへ遠征に行っていたんだ?」
「ドルガン王国の坑道に潜っていたよ、それでバルドルドって人から言伝があってまたよろしくって、会いたがっていたよ」
「お前、バルドルドに会ったのか!?」
「うん、そうだよ、それでこれをもらったんだ」
ヤヒスはそう言って首からさげた金属板をイエールに見せた。
「おまえっ!そりゃヘキサの欠片じゃねぇか!!」
「ヘキサの欠片ってなんだい?」
「ふぅーそこからか、いいか、ヘキサってのは冒険者の自治や冒険者の利用する店を守ったりする集団なんだよ、そんでその金属板は選ばれた冒険者しかもらえない証書みたいなモンなんだよ」
「イエールは持っているの?」
「持ってる、だがオレの場合は無理やり持たされたみてぇなもんでな、少しは素行を良くしろってな」
イエールは上着のポケットからヘキサの欠片を取り出した。
「しっかしバルドルドも何の説明もしなかったのか、いや、あの野郎説明を俺に丸投げしやがったな」
「えぇと、そうなると俺もその自治を守ったりしなきゃいけないのかな?」
「いや、お前はもう十分貢献している、釣りがくるぐらいだぜ、ダンジョンを発見したんだからな」
「ああ・・・そう言えばそうか、うん、じゃあ俺帰るよ」
「ああ、またな」
ヤヒスが酒場を出た後で、イエールはぽつりとつぶやいた
「ヤヒスのヤツは自覚あんのかね・・・」




