61 大掃除
ドルガン王国に遠征してクエストをこなしていたヤヒス達は着実にウデを上げていた。
キングタイガーの討伐など、ギルドに報告していない戦闘もあったが、スキルと向き合うと言う意味では実りある旅であった。
「さすがに一か月空けると埃がたまっているなぁ」
ヤヒスははたきがけをしながらそう言った。
パーティーメンバーは各人持ち場を決めてほうきやらモップやらを利用して掃除を進めている。
「でも元々きれいな家だから助かるわ、汚い家って掃除しても掃除してもきれいになった気がしないもの」
ヴィーシャはヤヒスに答えてそう言った。
半日ほど掃除に時間をかけて家じゅうをきれいにした。
「そろそろシーツ屋さんが来る頃ですね」
ミードリは時計を気にしている。
パムは自分のお気に入りのソファーを丁寧に掃除している。
誰が言ったわけでもないが、ソファーはパムの定位置のようになっている。
そうこうしているうちに玄関を叩くものが現れた。
「シーツ屋ですがヤヒスさんの家でいいかしら?」
おばさんが玄関先に立っている。
ミードリが対応して二階へ招き入れシーツの交換をしてもらう。
交換が終わったのかすぐにおばさんは降りてきて作業の終了を伝えてきた。
ゴールドを渡して次の交換日を約束をすると、おばさんは帰って行った。
「一息入れましょうか」ミードリがティーセットを手にしてほほ笑んでいる。
「さんせーい」
ヴィーシャの同意にヤヒス達も賛成した。
「ふぅー・・・美味しいわ」
ヴィーシャがほっとしたような顔をしている。
お菓子をつまみながら全員だらりとしている。
「今回は鉱山だったから・・・次はどこに行くと良いかな」
ヤヒスが地図を見てつぶやく。
「この時期からは山も入りやすくなる、魔物も湧く時期だね」
パムがそう言うと、ミードリが眼鏡をかけなおして発言した。
「モルゲン王国ですかね、あそこは山岳地帯でクエストも多いと聞きます」
「モルゲン王国?それならオレの村がある山の麓にあるよ」
ヤヒスは驚いた顔をした。
「そこなのよ、山越えがあるから時間がかかるのよね、馬車じゃないと無理なのよ」
「ああ、そうかぁそうだよなぁ・・・」
ヤヒスが肩を落とした。
「別にあなたがいた村が辺境だって馬鹿にしているわけじゃないわよ、ただモルゲン王国まで行ったからにはまた一か月は滞在しないと、ゴールドでマイナスがでちゃうから考え物だなってだけよ」
ヴィーシャがきまり悪そうに言っている。
「ははは、そんなのわかっているよ、ヴィーシャはそんなひどいことは言わないって」
ヤヒスがヴィーシャに投げかける。
ヴィーシャはもじもじしながら照れくさそうな顔をした。




