57 魔力増幅
ミードリが意識を取り戻すのを待つことにした三人は、草原をただ見つめて座り込む、誰も言葉を発しないまま日が傾きかけてきた。
しばらくするとミードリが目を開けて上体を起こした。
「ミードリ、大丈夫?痛い所はない?!」
ヴィーシャがミードリに近づいて言う。
「頭が痛いとかもうろうとするとか」
パムも声をかけた。
ミードリはきょとんとした顔で、三人をを眺める。
「ああ、そうか、私はキングタイガーに食べられたんでしたね」
彼女は明るい表情で言った。
「と言うことはキングタイガーを倒したんですね、良かったです!」
三人が憔悴しきるまで心配した出来事を、彼女はあっけらかんと口に出した。
その先もどうやって魔物を倒したのか詳しく話すと、彼女はにこやかに聞き入っており、場の空気が妙な感じになっている。
「そうだ!魔石はどうでしたか?あれだけの魔物を倒したのですから、それは強力な結合スキルが発動するんでしょうね」
ミードリはほほ笑んでいる。
「あなた・・・自分を食べた魔物の魔石よ、いやじゃないの・・・?」
ヴィーシャが怪訝な表情でミードリに話し掛ける。
「それが・・・俺たちはミードリを食べた魔物の魔石を持つのも、ギルドに報告するのもどうしても嫌で、そこらへんに投げ捨てちゃったんだ・・・」
「あら、もったいないですね、でも確かにあまり気分の良いものではないかもしれませんね」
(この娘はこんなに肝の座った娘だったのか・・・本人はほとんど気にしていないぞ、下手をすると精神を病むだろうと言うのに)
ヤヒスが考え込んでいるとミードリがロッドを持って立ち上がった。
「どうしたの」
パムが話し掛けると、ミードリは答えた。
「魔力量が増幅されている気がするのです、一発火炎魔法を放ってもいいでしょうか」
うろたえながらも全員がそれに了承した。
ミードリが火炎魔法を放つと以前の倍かそれ以上の威力の火炎が放出された。
座り込んでいた三人は口をぽかんと開けている。
「うん、やはりそうですね、おそらく魔物の体内に入り、一時的とはいえ魔素に溶け込んだので、それが定着した可能性がありますね」
「と、とにかく街へ戻りましょう、温泉に浸かるのも良いかもしれないわ」
ヴィーシャがそう言ったので、ヤヒスとパムはこくこくとうなづいた。
四人は日暮れの草原を抜けて林を通り、暗くなる前に街にたどり着いた。




