6 ミドルアント
「あなたやっぱりウチのパーティーに入って」ヴィーシャが顔を近づけてくる。
改めて言われると冒険者パーティーに入るのは気が引けてきた。
魔物と戦ったりダンジョンに潜ることが考えられるからだ。
「僕は壊れた武器の修理なんかをやって生活していこうかと思っているから、パーティーに入るのはちょっと」
ヤヒスがそう言うと、ヴィーシャが小声で話し掛けてきた。
「そんなことすると殺されるわよ」
「え?どう言うこと」
「いい、よく考えて、あなたのスキルは破損したものを修復するどころか、能力を大幅に上げるのよ、そんなことが知れたらみんなあなたの所に修理を持ち込むわ、鍛冶屋とか修理スキルで生計を立てている人間は全員職を失うわよ、そしたらどうなる?」
「あ、俺が邪魔になる・・・」
「そう言うこと、いつかどこかで川に浮いてるなんてことになるわよ」
「じゃあ、どうすれば」
「だからなおさらウチのパーティーに入りなさい」
少し考えたヤヒスは答えを出した。
「パーティーに入ります、でも俺は戦闘なんかできないよ」
「十分よ、後方で荷物持ちやってもらうわ、いざと言う時はスキルを使って」
(妙なことになっちゃったな、でもよく考えたらこの人たちに聞かされなかったら、露店でも始めて最終的に殺されていたかもしれない)
「良し、今日は解散、明日は8時に中央噴水に集合ね」
そうしてヴィーシャ達と別れた。
翌日の朝8時、ヤヒスは中央噴水の前にいた。
しばらく待っているとヴィーシャが現れた。
昨日はいなかった眼鏡をかけた少女がいる。
「昨日はいなかったから紹介するわ、魔法使いのミードリよ」
ミードリが頭をさげるので、ヤビスも頭をさげた。
「今日はどうするの?」ヤビスがヴィーシャに聞く。
「今日はミドルアントの討伐クエストよ、昨日はもうちょっとの所で剣が折れちゃったからリベンジね」
「私も魔法切れで、あとちょっとの所で規定の5体に届かなくて」
ミードリが恥ずかしそうに微笑む。
「じゃあ俺は、昨日話した通りに荷物持ちで良いんだね」
「そうよ、荷物持ちは前から欲しかったのよね、ポーションとかが多く運べるから」
「でも、荷物持ちの俺も報酬をもらうんでしょ?それでいいの?」
「荷物持ちは重要よ、それに・・・」
ヴィーシャは腰に下げた「結合」した剣を叩いて言った。
「コレだけでおつりがくるくらいだわ、しかしまだ自分の価値をわかってないみたいね」
「さぁ、行くわよ」ヴィーシャがそう言うので、ヤヒスは大きなリュックを背負ってついて行く。
城門を抜けて丘を上ると数体のミドルアントが見えてきた。
「ヤヒスは後方に下がっていなさい、ミードリが魔法を放って一体づつ引き付けて私が斬るの」
ヴィーシャはそう言ってミドルアントに向かって行く。
(初めてだから怖いな、俺も剣くらい持ってくればよかった)
そう思っているとミードリが火炎の魔法を放ってミドルアント一体を引き付けた。
そこにヴィーシャが斬り込んでいく。
ミドルアントの頭部がきれいに両断された。
(へぇ、さすがにみんな戦闘に慣れているんだな)
ヤヒスがそう思っていると、ヴィーシャが走ってこちらに向かってきた。
「ヤヒス!!この剣すごいわよ!!切れ味が全然違う!!これならミドルアントも楽勝でレベルも上がるわ!」
飛び跳ねているヴィーシャを見て自分まで嬉しくなるヤヒスだった。