53 ピンポイント攻撃
第五坑道は町から外れた場所にあった。
そこには遠くからでも視線に入る小山のようなものがそびえたっていた。
それは鉱山で排出された、利用価値のない鉱石や、土などを廃棄したものが、山になったものである。
ヤヒス達はその巨大さに圧倒されながら歩き、第五坑道に向かった。
坑道は入口に大きくバツマークの書かれた看板があり「この先魔物の出現あり、Dクラス冒険者以下は立ち入り禁止とする」
とあった。
「こんな看板があると急に気が引き締まって来るわね」
ヴィーシャが看板を見つめながら言っている。
「さっそく入るかい」
ヤヒスがそう言うとパーティーの全員がそれに答えた。
坑道内は魔石の明かりで照らし出されており、見通しが悪いと言うことは無かった。
しばらく進むと金属音や叫び声が聞こえてくる、近づいてみるとそれは先行している冒険者だった。
そこを離れて通り抜けて進む。
2-3の冒険者集団をかわして進むと、誰も居なさそうなエリアに出た。
「ここにしましょう」
ヴィーシャがそう言うとそれぞれ準備を始め、ヤヒスはリュックをおろして隅に置いた。
すると一匹のロックアントが現れた。
「パム!」
ヴィーシャが叫ぶと、パムは支援魔法をかけて、ミードリは火炎魔法を放つ。
火炎魔法はそれほど効果が無いようだった。
ヴィーシャはロックアントの前脚にある関節に剣撃を入れる、ロックアントはバランスを崩し体勢を崩す。
そうなった状態で、魔物の首間接に鋭く刃を叩き込んだ。
首が落ちてロックアントは塵となって消え、魔石が残った。
「うん、どこかの脚関節を落として体勢を崩す、その後首に一撃入れる方法が良さそうね」
彼女は満足そうな顔で話す。
しばらくするとまた2-3体のロックアントが現れたので、今度はヤヒスも攻撃に加わり剣撃を繰り出す。
(足関節を一撃で落として、返す刀でそのまま首を落とす)
心で念じながら戦うが、まだピンポイントの攻撃はうまくこなせないように見える。
戦闘が終わるとヴィーシャはヤヒスに声をかける
「サマになってるわよ、ピンポイント攻撃は難しいから、最初はうまくいかなくても気にしないで」
「ああ、本当にピンポイント攻撃は難しいんだね、前衛の難しさが日に日に良くわかって来るよ」
ヤヒスは言葉を返しロックアントの魔石を拾った。
「それを結合した時の効果も見ておいた方が良いわね」
「使える可能性もあるね、一応調べるのは大事だね」
パムもそれに応じる。
今日の所はこれまでと言った風で四人は坑道の外に向かって歩いて行った。




