51 ロックバニー
ドルガン王国に来て宿を取り、翌日になるとヤヒス達はさっそくクエストをこなしに出かけた。
王国は廃棄された鉱山や、魔物が湧くようになった洞窟に潜ることをクエストとして、冒険者に依頼していた、鉱山が一日でも使えなくなると、それだけ国益に響くので、重視される事柄だった。
ヤヒス達は腕慣らしとして廃棄された炭鉱に潜るクエストをこなしていた。
「ヤヒス、打ち込みは鋭く!」
「うん!」
「ミードリ!ロックバニーが集まってきた!まとめて火炎を!」
ヴィーシャが鋭く指示を出し、無難にこなせる魔物「ロックバニー」を討伐していた。
ロックバニーはその名の通り、額に石がはまっており、身のこなしと合わせて頭突きを仕掛けてくる。
(やはり洞窟は平地での戦いと勝手が違うな、武器もメイスからロングソードに持ち替えたばかりだから慣れないな)
「ロックバニーが一塊になった!チャンスよヤヒス!ウルフを!」
ヴィーシャが叫ぶと、ヤヒスは腰にあるポーチからウルフの魔石を取り出した。
ヤヒスは剣にウルフの魔石を当てて叫んだ。
「結合!ウルフ!」
ヤヒスの剣が巨大なウルフの顔になり咆哮を上げた。
魔物を結合した剣は魔物の特性が宿る。
ウルフの特性は「スタン」である。
塊になっていたロックバニーは全員倒れ伏し痙攣している。
「ミードリ!」
「はい!」
ミードリはロッドから火炎を放射してまとめてロックバニーを焼き払い魔物の群れは塵となって消え魔石が残った。
「やはりウルフは便利だね、ひとかたまりにいれば全部スタンさせることが出来る」
パムが魔石を拾いながら言う。
「そうね、でもヤヒスのスキルを頼りすぎるのは良くないわ、各自鍛錬を積んで、それと連携が一番大事よ」ヴィーシャの言葉にミードリが答える。
「そうですね、私の魔力も魔石も無限ではないし」
(そうなんだよね、色々工夫は出来るけれども結局は魔石頼りのスキルでもあるんだよな、ヴィーシャの言うように鍛錬しないといけないな)
ヤヒスは肩で息をしながら考えていた。
そこにヴィーシャが近寄ってきてヤヒスの手を取った。
ヤヒスは内心ドキリとしながら自分の手を見つめた。
「良いてのひらね、努力している手よ」
ヴィーシャは笑った。
「それにしてもやはりヤヒスには剣に適性があるわね、体幹がしっかりしているもの、これからも皆一緒に強くなっていきましょう」
ヴィーシャはパーティー全員の顔を見て言った。




