49 腕輪
野宿と徒歩を繰り返してドルガン王国たどり着いた一行を待ち受けていたのは、ソヴィリバーレ王国とはまるで違う光景だった。
城門は頑丈で、門番の鎧も細工が細かく輝いている。
何よりも目についたのはいくつもの煙突であった。
鉄工を生業としているため「炉」の数がケタ違いなのである。
「うはぁーソヴィリバーレとは何もかもが違うな」
ヤヒスは壁と言わず城門と言わずそこらじゅうを眺めまわしていた。
「とりあえずギルドの場所を聞かなくちゃね」ヴィーシャは門番に話し掛けにいく。
こういう時に物おじしないのがヴィーシャの良い所だ。
小走りに戻ってきたヴィーシャは言った。
「この大通りを東にずーっと行けば目立つ星マークが見えるから、すぐわかるだろうって言われたわ」
ヴィーシャはどこから手に入れてきたのか町の地図を指さしている。
全員揃って大通りを歩くと、生活用品を並べる金属加工の出店や、路面店では貴金属や装飾類を扱っている。
その数の多さに全員唖然としていた。
ある露店の前で、ヴィーシャが足を止めた。
腕輪を中心に扱う露店だ。
「ねぇおじさん、私達D級パーティーにランクアップしてこの国に来たの、なにか記念になるような腕輪はないかしら」
彼女は店主に問いかけて、何やら記念品を見つくろうようだった。
「そうだなぁ、この腕輪は物事の結束を強める彫り物がしてある、パーティーの結束が強まるかもしれんぞ」
「強まるかもって魔道具の類じゃないの」
「魔道具じゃなくてまぁ御守り程度のアクセサリーだな、もし魔道具でそう言った効果のあるものがるとしたら、えらく値の張る物になるぞ」
「じゃあ、ここから交渉タイムね、1000ゴールドってあるけどランクアップ記念で600にしてよ」
「無茶を言うお嬢さんだな、900で」
「750よ」
「ふぅ、刻んできたねぇ、850」
「800よ」
「わかったわかった、800で、お前さんたちは4人だから3200ゴールドだね」
ヴィーシャのしつこい交渉で値段を負けさせた腕輪を全員腕につける。
「うん!結束が高まる感じがするわね」
腕輪を付けて全員がはしゃいでいたとき、ヤヒスが妙なことを言いだした。
「あの・・・全員の髪の毛をくれないかな」
彼は恥ずかしそうに提案してきた。
「髪の毛、どうするの」
パムが当然の疑問を投げかけてくる。
「いや、この腕輪にさらにみんなの髪の毛を巻き付けることで、なんか、その・・・仲間って感じでいいかなって」
ヤヒスは恥ずかしそうにもじもじしながら言っている。
「いいじゃない!皆そうしましょう!」
ヴィーシャの一言で全員が自分以外のパーティーメンバーの髪の毛を腕輪に巻き付けた。
効果など期待できない腕輪と髪の毛だったが、何事も気の持ちようである、四人は嬉しそうに冒険者ギルドに向かった。




