5 ヴィーシャ
ダンジョン発見で3億ゴールドを手にすることになったヤヒスは、ギルド長にその用途を聞かれていた。
「銀行にお預けになられますか?」
「そうですね、まず、ビソル村に1億ゴールド送ってもらって、王都の端の方で良いから家族3-4人で住める家を、後は商売許可証が欲しいです、残りを銀行に」
「わかりました、近日中にはそのように取り計らいます」
「お願いします」
全ての整理が終わるとヤヒスは階段を降りてきた。
「おい、やったな、ダンジョン発見は冒険者の夢の一つだぜ!」
皆ヤヒスを祝福してくれている。
「みなさんにはお世話になりましたし、今日は僕が酒場でおごります」
その場にいた全員が歓声を上げる。
皆に見送られながらヤヒスは宿屋に向かった、比較的良い宿屋だ。
ベッドに横になり天井をみつめる。
「3億かぁ・・・夢みたいだな」そう呟いて横になり、気が付くと夜になっていた。
酒場に向かうとすでにギルドの面々が顔をそろえている。
酒が全員にいきわたる。
「ヤヒスダンジョン発見を祝して!!乾杯」
奢りとあって皆はしゃいでいる。
しばらくすると最初に話しかけてきた大柄な男がやってきた。
「おつかれさまです」ヤヒスは笑顔を向ける。
「お、おう、その、すまなかったな最初に馬鹿にしてよ、俺はイエールってんだ、ダンジョンが解放されたら稼がせてもらうぜ」
そう言ってイエールは去って行った。
夜遅く、酒場から宿屋へ帰る道すがらヤヒスは声をかけられた。
「あなたがヤヒスでしょう、ちょっと話があるんだけど」
そう言われて振り向くと、軽装鎧を身に付けた女性剣士と、ローブを纏った少女が立っていた。
「俺に何の用ですか?」
「あなた、私のパーティー黄昏に入ってくれないFランクの駆け出しパーティーだけどね」
「え?」
ヤヒスには状況が読めなかった。
「とにかく場所を変えるわよ」
女性剣士はヤヒスの手を引っ張っていき小さな酒場に案内した。
席に着くなり彼女はまくし立ててきた。
「あなた、レアスキル持ちだってね、結合って言う、登録もされていないスキル、物をくっけるんだって聞いたわ、今回のダンジョン発見はそのスキルのせいだと私は思うのよね」
ヤヒスはどきりとした。
酒が運ばれてきて口にすると自己紹介をしてきた。
「私はヴィーシャ、剣士をやっているわ、この子はパム、補助師なの」
「俺はヤヒス、出稼ぎ人だよ」
「話は早い方がいいわ、今日のクエストで折れた剣なの、これをくっつけてちょうだい」
ヤヒスは剣を合わせて手をかざす。
「結合」
光と共に剣が修復された。
「ふーん、見た目は修理スキルと変わんないわね」
それを聞いたヤヒスはこう言った。
「村では俺が結合したものは折れにくくなるって言われていたけど」
ヴィーシャはポーチからレンズを取り出した。
「なんですかそのレンズ」
ヤヒスはヴィーシャに尋ねる。
「これはツールレンズ、武器や防具の性能を見られるアイテムよ、何も知らないのね」
「田舎育ちで初めて王都に来たので・・・」
「そう、まぁいいわ・・・」
レンズを覗いていたヴィーシャが声をあげる。
「ウソ!攻撃力が15もプラス!耐久値30プラス!?」
「それってどう言うことですか」
「あなた、自分のスキルを知らないの!?高度な付与スキルよ!」
「鍬とか鎌とかにしか使用したことが無いので・・・よくわかりません」
ヴィーシャはあきれ顔でヤヒスを見つめていた。