46 女神の恩恵
ヤヒスの剣の練習が終わり、今度は低レベルクエストを受けての、剣術のトレーニングに入った。
対象はミドルアントである。
ヤヒスが剣を振るう音が聞こえてくる、ヴィーシャはそばで見守っている。
前脚を繰り出して来るミドルアントに対して、剣を斜めにしていなし、そのまま斜め上に切り上げる。
ミドルアントは塵になって消える。
ヤヒスは手数や剣捌きを変えていなしていく。
もう5体は倒したであろうか。
ヤヒスの眼光は普段の柔和なそれとは違い、鋭く重い目つきである。
「おどろいたわね、本当に上達が早いわ、特にスピードが速いわ、重装騎士のような重い攻撃ではなく、鋭さでいなしているわね」
ヴィーシャは目を細めてみている。
「恩恵、あるかもしれないね」
パムが口を開く。
「私も思っていました、これはギルドで調べる必要がありそうですね。
ミードリもそれに賛成する。
一通りのトレーニングをこなすとヴィーシャがヤヒスに言った。
「ヤヒス、ギルドで恩恵持ちじゃないかどうか調べてみるわよ」
「恩恵・・・?ああ、あのスキルを後押しするような能力の」
「それよ、剣術の恩恵が乗っているかもしれないわ」
「私たちもそう話しあっていたところです」
ミードリがそれに答えた。
一行は丘を離れて正門をくぐり、ギルドまで歩いて行った。
ギルドの扉をあけて、受付に顔を出す。
「あっヤヒスさん」受付嬢が名前を呼ぶと、ギルド内がざわついた。
「あれがヤヒス・・・」
「ワーウルフに変態したってヤツだろ」
「ああ、ダンジョンの名前にもなっている奴」
どうやらヤヒスは有名人になってきているらしい。
「すいません、恩恵があるかどうか調べて欲しいのですが」
「はい、お待ちください」
そう言うと受付嬢は分厚い本を取り出して、ヤヒスのギルドプレートを置き、本に手をかざすように求めた。
本のページが眩しく光ると文字が現れた。
「女神の恩寵」
「女神の恩寵、知らない恩恵ですね」調べます。
受付嬢はまた本を出してきて、ページをめくった。
「やはり出ていないですね、レアケースになります」
ギルド内がざわつく
「どういう恩恵なのかもわからないですか」
ヤヒスが問う。
「はい、全く記録がありませんね」
「剣の恩恵かと思っていたけど妙なのが出て来たわね、となるとヤヒスの剣術はその女神の恩恵の効果と言うことになるかもしれないわ」
ヴィーシャは腕組みしながらそう言った。




