4 ダンジョン
呆然と立ちすくすヤヒスが自分の手のひらを見ると、薄汚れたはずだったそれは綺麗になっていた。
身体の方々を見てみるが、汚れた箇所は少しもない。
ブラシやフードさえ新品同様の見た目だった。
「そうだ、ギルドに報告しなきゃ」
ブラシとバケツを持ってギルドに向かった。
ヤヒスが中に入ると皆鼻をつまんだが、まるで気にならなかった。
「掃除、全て終わりましたよ」
そう告げると受付嬢が言った。
「それは・・・その、今日でやめたいと言うことで」
「いえ、ほんとうに全ての掃除が終わりました」
「おい、やめたいなら素直に言えよ」
と冒険者の誰かが茶化して来る。
「じゃあ、見に来ますか、受付のお姉さんも確認をお願いします」
「頭がおかしくなったんじゃねぇか」
「ありうるぜ、なあおい見に行こうぜ」
結局その場にいた全員が下水道まで行くことになった。
「うっ入りたくねぇな」顔をしかめている者が何人もいる。
「おい気のせいか臭くないぞ」と怪訝な顔をする者もいた。
ヤヒスは慣れたように下水道への階段を降りいていく。
受付嬢がその後を怯えながらついて来る。
「はい、これ、見ての通りです」
そこにはまるで宮殿ごとく光景で、そこに湧き出す泉のような光景が広がっていた。
「こ、これは、本当に」受付嬢が呆然としている。
後に来た者も全員呆然としている。
「おい!マジかよ!本当にやったのか!どうやったんだ!?」最初に絡んで来た大柄な男が、ヤヒスの肩に手を回して喜んでいる。
「女神の加護ってヤツですかね」
ヤヒスも微笑み返す。
「ところで受付のお姉さん、この場合の、報酬はどうなりますか」
ギルドプレートを渡す。
「えっと、あれ、一日分のクエストしか溜まっていませんね」
(まぁ正確には俺がやったんじゃないからなぁ)ヤヒスは納得している。
「え、えええええ!!」
受付嬢が叫ぶ。
「うるせねぇなぁ姉ちゃん」と誰かが言った。
「ダ、ダダ、ダンジョン発見の印が出ています!!」
「「「はぁ!!?」」」
その場の全員が大声を出す。
「てことは、この下水が、ダンジョンだったってことか・・・?」
「ダンジョン発見って何かあるんですか」ヤヒスはよくわからないと言う顔をしている。
その後は大変だった。
衛兵が来て下水道改めダンジョンの入り口を固め、王都の都市計画官がやってきてヤヒスに根掘り葉掘り聞いてくる。
女神像のことは誰にも言わないことにして、下水道の浄化装置のような何かを押したのではないかと伝えておいた。
ギルドの二階にある一室。
ヤヒスはそこでソファーに腰かけていた。
ギルド長がヤヒスに説明している。
「まず、ダンジョンにあなたの名前が付けられます、次にダンジョン発見の報奨金として、国から3億ゴールドが出されます」
「3億ってどれくらいの価値ですか」
「貴族の宮殿がだいたいそのくらいです」
「えぇっすごい額じゃないですか」
「でもどうしてそんな額がもらえるんですか?」
「ダンジョンは宝物庫そのもののようなものでして、そこから産出される物はすさまじい額に及ぶのです、雇用の促進、冒険者の来訪など王都には3億が足元にも及ばないほどの利益が出るのです」
「え・・・これはもしかしてすごいことなんですか」
「はい、すごいです」
ギルド長は僅かに震えていた。