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36 四人の冒険者③

盗賊を退治したヤヒス達パーティーが麦わらの山に座り込んでいると、村人が集まってきた。

村長らしき高齢の男性が前に出てきて言った。

「このたびは盗賊の退治をしていただき、ありがとうございます、あなた方がいなかったらどうなっていたことか」

そう言って頭をさげた。


「偶然の成り行きですよ、それよりも何か食べるものをいただけませんか」

ヤヒスがそう言うと村人たちは、気付かなかったと言った様子で食事を取りに行った。

食事は硬いパンと麦がゆだった。


「本当に貧しい村なんだな」

ヤヒスがそう言うとヴィーシャがそれに答える

「私たちが王都でぜいたくな暮らしをしてたのが身に染みるわね」

他の二人は無言のままそれに答えた。


食事を終えると村の若者が来て、食器を片付けながら言う。

「申し訳ありません、寝る場所がその麦わらしかありませんのでそこで一晩過ごしてもらうしか」


ヴィーシャがそれに答える「野宿よりずっと快適よ、設えてくれただけでもありがたいわ」

そうして四人は床についた。


朝日で目を覚ましたヤヒスは井戸に行き顔を洗う。

後から三人も来て洗顔やこまごましたことを行う。

そうしていると村長がやってきて、紙切れを取り出した。


「これをギルドに差し出すと報酬がもらえますので、お納めください。

ヤヒスは黙って封筒を見つめている。

他の三人は黙ってヤヒスを見ている。


「俺たちは偶然村に立ち寄っただけで、クエストを受けてここに来たわけではありません、そのような状態ではそれは受け取れません」

「し、しかしそれでは」

村長はヤヒスをみてうろたえている。


「村の役に立てて欲しいってヤヒスは言ってるのよ、黙って下げてくれるとありがたいわ」

ヴィーシャがにこやかに言う。

全員がうなづく。

「おぉ・・・ありがとうございます、実際の所村は貧しいのでありまして、そのお申し出ありがたく受けさせていただきます」


「朝ごはん、食べたい、報酬は朝ごはんだね」

パムがそう言ったので全員クスクスと笑った。


朝食はパンときゅうりだった。

「このきゅうり美味しいですね」

とミードリが喜んでいる。


「農家のもぎたてだからね、鮮度が違うよ、トマトなんかも本当においしいんだ」

農家育ちのヤヒスがそう言った。

食事が終わると一行は出立の準備を始めた。


「旅立たれますか」と村長が言う。

「ええ、トヨハの町まで行きます」


パーティー一行が村を出ると村人全員があつまってお礼の言葉などをかけてくる。

村を出てしばらくしても声は聞こえてきた。


「ヤヒス、あなたらしいわね」とヴィーシャが話し掛けてくる。

「なにがだい」ヤヒスは答える。

「報酬を受け取らなかったことよ」


「ああ、俺は元々村がひどく貧しくなってしまい、出稼ぎに出て来た身だったからね、どうもそれと重ねてしまって」

「良いことはしておくものだと思います、この先めぐりめぐって私たちが助かることもあるかもしれないですよ。

ミードリがそう言うと、皆明るく笑った。

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