33 東へ
「王都は色々なものがあって便利だし、何よりこのパーティーホームが快適すぎるのよね」
ヴィーシャがソファーでだらけながら言った。
「だから王都から離れるクエストを受けたくないんだね」
パムが鋭いことを言う。
「うっ、そうよ、野宿も安宿も嫌になりつつあるのよ」
「でもこのままだと、同じクエストばかりでレベルも上がりませんね」
ミードリは本質をついて来る。
「そこだよねぇ・・・」
ヤヒスはお茶を飲みながら渋い顔をしている
「王都から東、徒歩で二日の所にトヨハの町がありますが、そこにもギルドがあるので、なにかあたらしい発見があるかもしれませんよ」
ミードリは地図を見ながら話している。
「野宿1回か、ならいいわね」ヴィーシャがソファから立って地図をのぞき込む。
「初級者向けのダンジョンもあるとガイドには書いてあります、この先ダンジョンに入るのに練習としてどうですか?」
「この停滞を打破するのには良いかもしれないわね、パムはどう思う」
「知らない町に行くのは良いね」
「だって、ヤヒスは?」
「ホームを離れるのは名残惜しいけど、パーティーとして成長しないといけないもんね、行ってみよう」
「じゃあ決まりね」
ヴィーシャは地図をとんとんと叩いた。
東への道すがらは新鮮だった。
「コイツ!素早いわ!ダブルスラッシュが当たらない」
ヴィーシャ達が戦っているのは「ワイルド・コッカー」である。
通常の鶏の5倍の体躯を持ち性格は獰猛である。
加えて、爪やクチバシでの攻撃は鋭く、苦戦を強いられている。
しかし動きを見切ったミードリがヴィーシャの攻撃を避けるタイミングで「みこし撃ち」で魔物を炎上させる。
この連携がうまくいき、何体かのワイルド・コッカーが塵と消えた。
ヤヒスは魔石をせっせと集めている。
「魔石も確保したし進もうか」
ヤヒスがそう言うと、全員道を進んでいく。
途中、ミドルスネークを何体か、ロックトータスを一体倒し、魔石を確保していった。
「おかしいですね、この辺りには三本杉が見えてくるはずなのですが」
ミードリは地図を見ながら顔をかしげている。
「道が細くなっている、街道じゃないね」
パムも変化に気付いたようだ。
「それって要するに・・・道を間違えた?」
ヤヒスが言うと全員が目を伏せた。
「まずいな、もう日も暮れるしこれから街道に戻るにも暗くなるし、あまり良くないな」
しばらくするとパムが何かに気付いた
「灯りが見える、人が住んでいるのかもしれないね」
「うーん、そこまで行ってみましょう」
ヴィーシャの一言で全員そろって灯りの方へ歩いて行った。




