32 猫探し引き受けます
いつもの様に魔物を倒しギルドで討伐確認をするヤヒスたち。
「あら、ヤヒスさんレベルがあがっていますね、おめでとうございます」
受付嬢が笑顔で言ってきた。
「あれ、全然気付きませんでした」
「戦闘中だとか気を抜いているときは気付かないことがありますね」
(そうか、今度からはギルドプレートをよく確認するようにしよう)
ヤヒスがそう考えてクエスト掲示板を見るとFランクの依頼が貼りだしてあった。
(ふーん・・・え?Fランクで20万ゴールド!?)
「あの、このFランクの依頼、20万って」
「それですか、迷いネコの捜索依頼なんですが、5日経ってもだれも探し出せなくて、どんどん金額が上がって行って」
受付嬢は困った顔をしている。
「それにしたって猫探しと言うのは」
「富豪のベルヌ夫人の依頼なんです、大事な猫ちゃんみたいで」
「どうしたのヤヒス」
ヴィーシャが話し掛けてくる
「この依頼なんだけど・・・」
「えっと・・・20万!?受けましょう!!」
「でも誰も探しきれてないって、いや・・・うん、そうだ、どうにかなるかもしれない」
「それでいまからベルヌ夫人の屋敷に行くんですか」
ミードリが話し掛けてくる
「まずは現場検証だね」
とパムは歩きながら言う。
ヤヒスたちは屋敷までたどり着いてドアをノックした。
「失礼します、冒険者ギルドの者です」
そのとたんドアが勢いよく開いた。
「みゅうちゃん見つかったの!?」
ベルヌ夫人は大きな声を出す。
「それが、今依頼を受けに来まして」
「そう・・・でも探す人は多い方が良いわね、何か情報が必要かしら?」
「みゅうちゃんの毛がいくつか欲しいんですけど」
「それならいくらでもあるわ、抜けた毛は全部集めてクッションにするつもりなの」
「ではそれを貸していただけませんか?」
「ええ、いいですわよ、でも、なにか役に立つの?」
「はい、おおいに!」
「なんて言ってたけど、どうするのそれ」
「見てろよ、結合・・・」
ヤヒスがそう言うと毛束を入れた袋が宙に浮いた。
「わかった、持ち主の猫の所に毛は戻って行く」
パムは気付いたようだ。
「でも、結合ってもっと激しく繋がるものでは」
ミードリが聞いてくる。
「訓練したんだよ、結合の長短や軽重を調節できるようになったんだよ」
そう会話しながら宙に浮いた袋を追っていく。
「裏門の方に進んでいるわね」
ヴィーシャが袋を見つめながら言う。
その内、袋は裏門を出て小道に入って行った
「城壁の外だったんだ、これじゃあわからないのも無理ないな」
ヤヒスは頷いている。
しばらくすると袋は茂みの中に入って行った。
そこには猟師がかける箱罠が置いて有り、ぐったりした猫がはいっていた。
「この子だわ」
ヴィーシャは箱罠を持ち上げて茂みを出て、箱から猫を取り出す。
「ひどくぐったりしているわ」
「やせているね」
パムは悲しそうに見える。
「パム、ヒールを」
「わかっている」
パムはすでにヒールの構えをしていた
「ヒール」
猫の身体は輝き毛色が良くなっていき、からだを少し持ち上げた。
「食べ物をあげなくちゃ、早く夫人の元へ」
パムが猫を抱き上げてみんなで走り出す。
裏門をくぐって屋敷まで走る。
みんな息を切らせながらベルヌ夫人の家に到着してドアをノックする。
「はーい、あらあなたたち、わからないことでもあったの?」
早く戻ったので、夫人はまだ捜索中だと思っているようだ。
「この子、みゅうちゃんですか」
パムが夫人にたずねる。
「この首輪、毛の模様、間違いないわ!!みゅうちゃんよ!!どこにいたの」
ヤヒス達は経緯を話した。
「まぁそれで、でも危なかったわね、あなたたちが気付かなければ助からなかったかもしれないわ」
夫人は涙を浮かべている。
「アナタたちには依頼料の倍、いや、三倍を受け取ってもらうわ!」
全員驚いて固まっている。
「待っててね、ギルドに一筆書くから」
夫人はそう言って奥に引っ込み、封筒を持って戻ってきた。
ヤヒスはそれをポケットにしまい込み、ギルドへの道を歩く。
「猫探して60万・・・」
ヴィーシャがつぶやく
「人助けになりましたし良い依頼でしたね。
四人はわいわいと話しながらギルドに入って行った。




