番外編 イエールと言う男③
「ようヤヒス」
「ヤヒスじゃねぇか」
「なーにやってんだヤヒス」
イエールはダンジョン発見の一件以来、ヤヒスを見かけると声をかけ、穴場の狩場や戦い方を伝えたり世間話で盛り上がったりしていた。
どうやらヤヒスはすぐにパーティーを組めたらしく、ビギナー集団のパーティー「黄昏」の女性たちとともにいることが多かった。
(ふんむ、パーティーが見つかったようで良かったぜ、まだひよっこばかりだがコイツのことだからまたあっと驚くことをしでかすかもしれねぇな)
イエールはなぜか気分が良くなり、その足で酒場に向かった。
イエールは中央広場にのらくらと歩いていたが、すでに多くの人々が詰め掛けていた。
「これこれぇ!この熱気こそ闘技大会!今年は負けを取り戻してやるぜ!!」
彼はそう言うと、賭け対象になっているパーティー一覧が貼りだされた看板を眺めていた。
(おん?黄昏がエントリーしているじゃぁねぇか、しかしこの大会のレベルに対応できるのか・・・?ふん、ほら見ろダントツでオッズが高いじゃねぇか・・・まてよ、こりゃ穴だぜ、賭けりゃ大勝ちできる、それによ、ヤヒスの野郎が意味もなく不利な大会に出るわきゃねぇ)
「おい、おい、黄昏に50万!!」
「おぉ旦那大穴狙いだねぇ、金額もデカい、独り勝ちできるかもな、でもよ、あいつらはまだ駆け出しを卒業したような連中ばかりだ、勝ち目は薄いぜ」
金を受け取った男は、印が押された紙に何事か書きつけた後でイエールに手渡した。
それから時間が立ち、イエールは両手を上げ下げして大声を出していた。
黄昏パーティーの優勝。
すなわちイエールの大勝ちを意味していた。
イエールは金を受け取り、黄昏パーティーが通りそうな道を選んで彼らが通るのを待ち構えていた。
しばらくすると上ずった声をあげて彼らがやって来た。
「ヤヒス!お前を信じて正解だった!賭けで大儲けだありがとよ!」
イエールはそう言ってヤヒスと肩を組んだ。
嬉しい瞬間だ。
そう、もう二人は友達なのだ。
黄昏パーティーと縁があるのか、その後もイエールは行く先々で彼らと出会う。
そのなかでも一番鮮烈なのは何千と押し寄せてくる魔王軍を、黄昏パーティーだけでほとんど全滅させたことだった。
「ふーん・・・下水掃除から魔王軍討伐まで成りあがったか・・・なんつーかオレまで嬉しくなるぜ」
だがイエールはこの時、それ以上の厄災を黄昏パーティーがその手で打ち破ることを想像もしていなかった。




