番外編 イエールと言う男①
イエールはカフェバーでエールをあおっていた。
これは彼の日課となっており、朝から気分を上げるのに役立っている。
カフェバーを出て冒険者ギルドにむかい、ドアを開けていつもの席に着くとパーティーメンバーはイエール以外集まっていた。
「いつもの朝酒か、好きだねぇ」
「まぁそれで気力が上がるってんなら良いのかもしれんがよ」
仲間たちはイエールに向かって軽口をたたきながらクエスト用紙を見て何事か話し合っている。
しばらくすると、冒険者ギルドのドアを開ける音がしたので何気なくそちらに目をやる。
そこには大きなリュックを背負い、あか抜けない服を着た少年が辺りを見回していた。
(見るからに田舎モンのルーキーだな、田舎を出て一旗揚げようって良くあるパターンだな、さていつまで持つかねぇ・・・)
イエールはそれとなく話を聞いていると、その少年がレアスキルを有していると言うような会話が聞こえてきた。
少しは使えるスキルでも持っているのかと、席を立ったイエールは少年の背後から鑑定書をのぞき込んだ。
「レアスキルだって?どんなのだよ」
少年は少し驚いた風な顔をして振り向き、物をくっつけるスキルだと答える。
「くっつける?がはははははは、なんだそりゃレアって聞こえたから来てみたらカススキルかよ!!」
イエールは酒も入っていることもあってか、その少年を散々にコケにした。
やがて少年は自分とパーティーを組む者が誰もいないことに肩を落とした、それを見た受付嬢は、彼に下水道掃除のクエストがあることを伝えた。
(さて、大体のルーキーはここで心がなえて職安の方に糧を求めに行くが・・・)
イエールは面白そうに少年を眺めていた。
はたして少年は下水道掃除を選び、掃除道具を持って冒険者ギルドを出て行った。
イエールは少年が想定外の選択をしたことからこの先どうなるか興味を持った。
しばらくの間、冒険者ギルドは下水掃除の少年のことでざわついていたが、やがてそれぞれにクエストに向かった。
イエール達もクエストに向かい北方の山岳地帯に足を踏み入れて行った。
イエール達のパーティーが遠方への遠征から戻ると冒険者ギルド内がざわついている。
「じゃあ、見に来ますか、受付のお姉さんも確認をお願いします」
「頭がおかしくなったんじゃねぇか」
「ありうるぜ、なあおい見に行こうぜ」
例の少年が少し強気な態度で周囲の冒険者と会話をしているのが目に入る。
「おい、何の騒ぎだ?」
「ん、イエールか、例の下水道掃除野郎が掃除が全部終わったとふいてんだよ、だからからかいついでに下水道を見に行こうってところよ」
「ほう、そりゃおもしれぇな、俺も見に行くか」
はたしてイエール達は少年が掃除をやり終えたと主張する下水道に、うす笑いを浮かべながらどたどたと歩いて行った。




