30 魔石
オオツメカワウソの討伐を終えて王都へ戻ってきたヤヒス達一行は、その足で冒険者ギルドに向かった。
「はい、オオツメカワウソの討伐、確かに確認しました」
受付嬢がギルドプレートをかえして来る。
プレートを見ると緑色の線が伸びている。
「あの、この線は何ですか」
ヤヒスは彼女に疑問をぶつけた。
「ああ、これはですね、経験値バーですね、これが端まで行ったらレベルアップします、この感じだともうすぐレベルアップしますよ」
「え、そうなんですか、嬉しいです」
ヤヒスは笑顔を見せる。
「ねえヴィーシャ、俺は少し図書館に行きたいだけど、先に帰ってくれるかな」
「いいけど、何を調べるの?」
「魔石のことで気になることがあって」
「ふーん、行ってらっしゃい」
ヤヒスは三人と別れて図書館に向かった。
図書館はあいかわらず広く、荘厳な彫り物が施されている。
(魔石魔石・・・あったこれだ)
ヤヒスは本を手に取りパラパラとめくりはじめた
(これかな?ええと魔石は魔物の中核をなすもので、その能力や特徴が封じ込められているとされるが、確認できた例が無いため、憶測にとどまっている・・・)
「そうか、これならオレの考えと合致しているかもしれないぞ、やってみる価値はあるな」
ヤヒスはポケットから魔石を二個取り出して眺めた。
次の日もオオツメカワウソの討伐クエストを受けた四人は踏み跡を歩いて現場に向かっていた。
「オオツメカワウソも十分討伐できるから、心配なさそうね」
ヴィーシャが明るい顔で話している。
しばらく進むと昨日より手前の小川にオオツメカワウソの群れがあった。
「さぁ戦闘開始よ」ヴィーシャが言うと、ヤヒスが言葉をかけてきた。
「ちょっとやってみたいことがあるんだけど」
「なに、また剥離のスキル?」
「いや、今度は結合なんだ」
三人ともよくわからないと言う表情をしている。
「ヴィーシャは剣を、ミードリはロッドを貸してくれないか」
ヤヒスは二人の武器を受け取ると、ポケットから魔石を取り出しそれぞれの武器の間に置いた。
「結合!」
ヤヒスが叫ぶと剣とロッドが光り、魔石がそれらに吸収されていった。
「魔石と結合させたの!?」
「うん、図書館の書物で調べたら理屈的には出来そうだから、試してみたんだけどうまく言ったみたいだ
「何か刀身が薄黒くなっているわね」
ヴィーシャがつぶやく。
「私のロッドもです」
ミードリは少し困惑している。
パムは補助魔法の体勢に入った。
戦闘の始まりだ。




