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282 ハウリング③

プルツ国へ行く仲間と別れたヤヒス達はすぐに法務省のドアを叩いた。


デスクにふんぞり返っていかにも暇そうにしている受付係は、カウンターに詰めて来たヤヒス達を一瞥して言った。


「平民の訴えはまず身分照会に住民課に行きな、そこで身分照会をしてからまた来たら話を聞いてやる、行った行った」


あからさまな差別にマサカツが声をもらした。

「うーわ、お役所仕事なんてもんじゃないな、昭和の役所の方がまだマシだっただろうよ」


「平民!?をないがしろにするのか!!じゃあこれでどうだ!!国家金星章だ!!神殺しのヤヒスが来たと上に問い合わせろ」

「・・・こっこれは間違いなく国家金星勲章!!失礼しました、上のものを今すぐ!!」


「ふん、こんなお飾りでも役に立つもんだね」

ヤヒスは勲章を胸のポケットにしまった。


「お待たせしました、どのようなご用件でしょうか?」

上役は明らかに焦った様子で受付に立った。


「この度発生したドルガン王国との国交断絶の件で、裏で糸を引いている奴が分かった」

マサカツは紙束を受付に置いた。


「簡潔に言うと獣人とここの大臣が共謀して国家転覆をはかろうとしている、この書類はその証拠だ」

マサカツは受付の板木を爪先でカツカツと叩き、目を通すことを催促するような態度を取った。


急いで何名かの職員が目を通している。


「大臣の名が記されている・・・本物か?アヒンとは何だ?」

「アヒンとは中毒性のある植物、まさかそんなものが」

「おいおい・・・裏にいるのは獣人だぞ」


しばらく受付係がざわめきを見せていたが、落ち着いた様子で聞いてきた。


「これはどこ手に入れたのだ?」

「ハウリングなる獣人の集団の隠れ家だよ」


「うぅむ・・・これは早急に会議を開き大臣に聞き込みをする必要があるな」

「いつ頃結果が出るの?」


ヤヒスが質問すると受付係が答えた。


「うむ、急ぎで3-4日と言ったところだろう」


「ではその頃にまた」

マサカツはそう言って受付に背を向けた。


法務省の建物を出てパーティーホームへの帰り道でフィスが一言もらした。


「あれで何とかなるモノかのう?」

「本物を持ってきているんだ、すぐに大臣はつかまるよ!」


ヤヒスの明るい声にマサカツが低い声で割って入った。


「いや・・・あれは本物だが本物と言う証がどこにもない、どこの誰だか知らない者が作成した書類とかわらない、それに外部告発と言うのはとても難しいんだ」


「大臣のサインでもあれば別だがアレにはそれが無かった」


しばらくしてパーティーホームに戻った三人は、ダイニングテーブルで話し合いをしていた。


「と言うわけであの書類は通らないモノとして扱おう、だがあの書類が大臣の所に提示された場合必ず何か行動を起こす、そこを確保する」

「行動ってなんだい?」


ヤヒスがフィスと目を合わせながらマサカツに聞いた。


「ハウリングの輩は間違いなく直接大臣とやり取りしている、どう連絡をつけているかはわからないが、おそらく自室で堂々と密会しているだろう」


「自室で?そんなのいずれバレるのではないかのう」

フィスは良くわからないと言った表情でいる。


「国の高官ともなれば多少妙な人物と接見していても怪しまれることが無い、機密上は誰かが部屋に入ることも少ないだろう、いわば自分の城だ、安心してやり取りできるのは大臣の自室になるだろうね」


マサカツはその後も何か独り言のようなことを口に出して紙に文字を書きつけていた。



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