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281 ハウリング②

ワーウルフのシースから教わった家屋には隠し部屋があった。


ヴィーシャとヤヒスが入り、その他2名が入るといっぱいになるような部屋だ。


「壁に地図がいくつかあるわね」

ヴィーシャはしばらく壁を眺めた後で地図を剥がしてまとめた。


机には何やら書類のようなものがまとめられており、ヤヒスはその束を手に取ると、他2名は机の下やら、壁の仕掛けやらを探して、他に何かないか探し出す。


「これで一通りの物が揃った感じだね」

ヤヒスがそう言うと全員部屋から出て、ダイニングテーブルにすわったり、椅子が足らない物は立ったまま様子を眺めている。


フィスは外に出て周囲の警戒を担当した。


「まずはプルツ国に関する資料をまとめましょう」

ヴィーシャがそう言って紙束を広げると、何枚かの書類がまとめられ、地図も広げられた。


「北方の国は政治と農耕が弱いから付け込めると言うような内容が全体的に見られるわね」

「ふむ、大臣がターゲットにされておるな、と言うことはやはり、ソヴィルバーレとの戦争はハウリングなる組織の後ろ盾があってのものであるかな」

ヴィーシャが紙束を後ろに立っているリャヒに手渡している。


「地図にも印が書き込まれて日付がありますね、これは事の決行日を示したものでしょうか」

「こちらはメンバーの勧誘について名簿が書かれているね」

ミードリとパムは肩を寄せ合って書類に目を通している。


「地図のこの場所は・・・こっちの書類とまとめられているな、内容を確認するにどうやらケーシの栽培状況らしい」

マサカツは重なった二枚の書類をめくって壁にもたれている。


「みんな見て、ソヴィルバーレとドルガンのことが書かれているわ・・・この内容によると大臣をアヒン漬けにして王の座に据えると騙し、ドルガンへの禁輸措置を敷くようなことが書かれている、まさに今起こっている状況ね」


「その先の計画については何も書かれていないかい?、どうもこの組織は非常に優れた計画性と情報収集力を持っていると思われる、2手3手先まで計画を練っていてもおかしくはない」

マサカツがヤヒスの後ろから書面をのぞき込んで言った。


ヴィーシャは様々な書類をてらし合わせてためいきをつき、話し出した。

「ソヴィルバーレとドルガンが本格的な戦闘状態になったら少数精鋭の獣人が王城に潜り込んで王を殺害、国の乗っ取りのために外から多勢が市街を掌握する・・・このようなことが書かれているわね」


「むぅ・・・これは何としても止めねばならん、我が国の大臣がまだ何か情報を隠しているやもしれぬ」

「そうね、でもスピードが命だわ、二手に分かれましょう」


リャヒは自分とヴィーシャが中心に班を組み、プルツ国に入ることを提案し、ヤヒスは顔が利くからと言う理由で、公官庁に書類の提出をする役割についた。


「さぁ、早さが命よ、プルツ国に出発しないと!」

ヴィーシャはチヌックの背に乗りながら言った。


「チヌック、俺はいないけれども皆をプルツ国まで頼んだよ」

「は、我が主、この身に変えても安全に行き来してみせます」

ヤヒスがチヌックに話しかけ、喉を撫でてやると彼は嬉しそうに転がるような声色を出した。


チヌックが飛び去るのをみているとフィスがヤヒスの腰に抱き着いて来た。


「うぉっと、なんだいどうした?」

「ワシもチヌックみたいに褒めて欲しい」

フィスの言葉にヤヒスは彼女の頭を撫でて言った。


「いつも先陣を切らせてすまないね、頼りにしているよ」


それを聞いたフィスはヤヒスの身体に顔をこすりつけた。

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