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280 ハウリング①

ソヴィルバーレ南門から出て全員がチヌックの背に乗った。

街道を低く飛んでいくと西には農耕地帯、東には深い森林が長く続いている。


「確か三本杉だったよな・・・」

ヤヒスは地図を手に街道を見通している。


「我が主、私の視点では三本杉は見えております」

チヌックがヤヒスに伝えた。


「あら、意外と近いのね」

ヴィーシャは片目で遠くを見据えるような体制を取っている。


しばらく進むと誰の目にもはっきりと三本杉がうつる距離になった。


「我が主、三本杉の前で降ろしますか?」

チヌックがそう言ってきたので、ヤヒスはそうする旨を伝えた。


黄昏パーティー一行はチヌックから降りて南への街道を歩いている。


「10分だってことよね?」

ヴィーシャがヤヒスに伝える。

ヤヒスはその位だと伝えると全員で森林に続く踏み跡を探して歩いた。


「あっ!」

「おっ?」


ミードリとリャヒが踏み跡を見つけたようでその位置で止まり踏み跡を確認した。


「うん、これは結構使い込まれた踏み跡だね、だけど新しい下草も伸びてきている、放棄されたアジトかな?」


マサカツはかがみ込んで踏み跡を見つめている。


頑健な肉体を持つフィスを先頭に踏み跡を進んで行くとそう遠くない距離に中規模な石造りの家が見えて来た。


「いいか、ワシがドアをけ破って中に突入する、次にヴィーシャとマスターがそれぞれの部屋を確認する、その他の者は各自後から入って部屋を確保、または入り口を固めてくれ」


茂みの中から家を見張る一向にフィスが指示を出した。


「良し!いけいけいけ!!」

フィスは叫びながら宙を舞い、ドアをけ破った勢いで着地して、奥の部屋まで突っ込んでいく。


あとからヴィーシャとヤヒスが追い付き各部屋の戸を破り中を確認していった。


「誰もいないわね・・・ただの誰かの家ってことは無いわよね?」

ヴィーシャが部屋の調度品などを見ながら声を出した。


「いや、ここで間違いないぞ、獣人の匂いがプンプンするわい」

フィスはその嗅覚で獣人のアジトだと主張してくる。


「5-6人暮らせる設備がありながら生活感が無い、食器なども埃がたまったまま」

「うむ、同感だ、もう使っておらんのだろう」

パムとリャヒは暖炉の前を見回している。


外から戻って来たマサカツが室内を確認すると一言発した。


「この家、変だねぇ、煙突は無いのにそこに暖炉があるし使った形跡もない、あと部屋の配置も妙だ、一部屋分足りないように見える」


「む、どう言うことだ?我は全く気付かなかったが」


リャヒ以下何名かよくわからないと言う旨の発言をしたが、ミードリはロッドを肩にもたれさせて発言した。


「隠し部屋・・・」


「さすがだね、暖炉の前に絨毯がある、これをどけると・・・」


マサカツが絨毯を勢いよくめくると石の床に弧を描くように、石が削れた痕跡があった。


「さて次だけど・・・スイッチだな・・・・んっ、ここだけ黒く染みが付いている石があるな、これは何度も個の石に障った証拠だ」


そう言いながらマサカツがスイッチを押すと石がこすれる重苦しい音共に暖炉が90度開き、中には机と椅子が並んだ部屋が現れた。

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