279 黒ローブの男②
「・・・詳しく話してくれないか」
「ああ」
シースは顔をあげて彼にまとわりついている子供たちに声をかけた。
「おいちびっ子ども、大事な話があるからまた明日な~」
子どもたちは不服そうにしながらも素直に散っていった。
「どこから話すかな、俺が食うや食わずだったのは知っているな?そんなときに黒ローブの男が話しかけてきたんだ、近く魔物の国がソヴィルバーレに攻め込むから仲間に加わらないかと」
「やはりあの戦いは仕組まれた物だったのか」
シースの話しにヤヒスはうなづいている。
「金払いも良かったし、人間に恨みもあったから即飛びついたよ」
「大きな組織なのかい?」
「俺には規模までは分からなかった、秘密の多い組織でね、だが組織名は分かったハウリングだ」
「ハウリング・・・遠吠えって意味だね」
シースは紙切れを見つめながら、何か記憶をたどるような表情をしている。
「思い出した、この国から南のそう遠くないところにアジトがあった、最も俺は1回しか行ったことが無かったし、アジトは変えている可能性があるがな、地図を出してみろ」
シースは地図を見つめていたがペンで丸印と木を三本書き込んだ。
「街道を進むとまずレンガ造りの廃屋がある、そこを南下するとひときわ大きな三本杉があるんだ、そこから10分ほど進むと森の中に踏み跡がある、そこを進めば奴らのアジトがある」
「うんうん、わかったよ兄ちゃんありがとう!」
ヤヒスはそう言うと街路に消えて行き、集合場所になっているカフェのテラス席で、他の全員と合流した。
「ごめんよ遅くなって」
「いいわよ、皆ついさっき集まったような感じだし、ところで収穫はあったの?」
ヴィーシャはヤヒスに話を振った。
「ワーウルフの男に話を聞けたよ大まかな話はこうだ・・・」
ヤヒスはシースに聞いたことを全員に伝えた。
「ハウリングね・・・リャヒが想像してたことも当たっていたようね、この組織が先の戦争に関わっている」
「そのアジトとやらは絶対に押さえたいのう」
ヴィーシャとフィスは地図をのぞき込んで険しい顔をしている。
「む、まずは一番最初にアジトを見つけ出したほうが良いだろうか」
「そこを押さえられたなら構成員を捕らえられる」
リャヒは横に座ったパムに話しかけて今後の方針を伺っている。
「そうね、でも最初に冒険者ギルドに顔を出しておきましょう、何か情報があるかもしれないわ」
ヴィーシャが椅子を立つと次々とそれにならって席を立ち、代金を無造作にテーブルに置いてギルドに向かった。
「お、黄昏の連中、久々に見たぜ」
「また変なクエストを押し付けられたのか?」
椅子に座った面々が声をかけてくる。
「はは、機密保持だよ」
ヤヒスがそう言うと一人の冒険者が言った。
「て、ことはドルガンとの件は知らないのか?」
「ドルガンがどうしたのよ」
「知らんようだな、現在ソヴィルバーレとドルガンは国交断絶状態にあって、国境に壁が築かれ兵が駐屯している」
「なんですって・・・」
「理由はなんだ、上からの発表はないのか?」
「それが誰も知らされてねぇんだな」
リャヒの問いに冒険者の一人が答えた。
「戦争になるって噂もあるぜ」
「戦争・・・今までうまくやってきていたのに」
ミードリは困惑した顔で額に手をあてている。
「情報ありがとう!!私たちも心当たりがないわけでもないから調べてまわるわ!」
ヴィーシャは早足でギルドを出ると南門に向かった。
「ハウリングが関わってると思っているんだろう?」
「そうよ!可能性は高いわ、だから今からアジトに踏み込むわよ」
ヤヒスの質問にヴィーシャは早口で答えた。




