278 黒ローブの男①
ケーシを栽培していた村を出て3日すると眼前に山脈が見えて来た。
「山脈が見えるが、以前越えたものよりも低く感じるな」
ヤヒスは額に手をかざしながら前方を見つめている。山脈の岩肌は煤けた砂色をしており、砂漠地帯が近いことが見て取れた。
チヌックはゆっくりと山脈に沿って飛翔して滑るように地表に近づいた。
「地表が土獏になっているね、なんとなく南の砂漠に似ている」
「マスターヤヒス、おっしゃる通りここはソヴィルバーレから南に下った砂漠地帯です」
ヤヒスの声にチヌックが答える。
「えっ!?じゃあもうすぐじゃないチヌック、どのくらいかかるの?」
「盟友、3日程度でソヴィルバーレに到着すると思われる。
ヴィーシャは嬉しそうな表情を見せた。
その日は砂漠の都市に宿泊して、石造りの宿に宿泊した。
「うーむ・・・」
マサカツは食事が進まない様子でさっきから何か考え込んでいた。
「どうしたんだい?何か引っかかることがあるのかい?」
ヤヒスは隣に座ったマサカツの顔を見つめている。
「黒いローブの男・・・元魔王軍幹部は、黒いローブの男に出会って魔王軍に組みした、ワーウルフ事件の男も同じようなことを言っていた」
マサカツの言葉にゆっくりと顔をあげたリャヒは言葉をもらした。
「・・・魔王軍がソヴィルバーレに攻め込もうとしたのはその黒ローブにそそのかされて、大臣の裏で糸を引いていた者がいた、と?」
「辻褄は合う、大臣とワーウルフの男に聞き込みをする必要がある。
ミードリとパムは肩を並べて話をすすめている。
「帰ったら急いで二人に会わないといけないね」
ヤヒスが口に手をあてて言葉をもらす。
それから2日砂漠地帯を抜けて森林が見えてきたところで、ようやくソヴィルバーレの城壁が見えて来た。
黄昏パーティー一行はチヌックから降りて、早足で城門をくぐり衛兵の詰め所に向かった。
「聞きたいことがあるんだけれどいいかしら?」
「おん?おお、黄昏パーティーじゃないか、ワーウルフ事件の」
「そのワーウルフは今どうしているの?」
「魔力を吸っただけだからな、軽い罪で済んだから今や清掃局で働いているよ」
それを聞いたヴィーシャはすぐに官庁街の清掃局窓口にむかった。
「ああ、ワーウルフの彼ね、良く働くし子供に好かれていて評判もいいよ」
受付の男は柔和な声でそう語りかけて来た。
「今日の担当地区はどこになるのかな?」
ヤヒスがそう問いかけると、男は「D3地区」だと教えてくれたのでそこへ向かう。
ソヴィルバーレの敷地は大きく、地区ごとに区切られてはいるが、そこで人を探すのは容易ではない。
黄昏パーティー一行は手分けしてワーウルフの男を探して回った。
そのうち子供のはしゃぎ声が聞こえてきたので無意識に目をやると、子供を肩車した清掃員の姿があった。
(清掃員・・・子供に好かれている・・・あの人なんじゃないか?)
ヤヒスはそう考えて清掃員に近づいていった。
「すみません、ちょっと良いですか?」
「うん?なんだい・・・どこかで見た顔だと思ったらお前は俺を捕縛したヤツじゃないか」
「やっぱりそうか、俺はヤヒス、兄ちゃんは?」
「俺はシースだ、なんだ?また捕縛しに来たのか?」
「違うよ、協力して欲しいんだ」
そう言うとヤヒスはポケットから紙切れを取りだした。
「これは写しだけれど、この名前とマークに見覚えは無いかな」
「・・・良く知っているよ黒ローブの男だ、そもそも俺が魔力を吸い取っていたのはこいつらからの入れ知恵だったからな。
シースは鋭い目つきになり紙切れを見つめた。




