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276 花の村④

村の隅にある芝生広場に座り込む形で村人の話を聞くことになった。


村人たちは皆頭をたれており、ピリついた空気が漂っていた。


「村長、事のきっかけは何?」

ヴィーシャが言葉を投げかけると初老の村長が口を開いた。


「あれは・・・二年前のことです、この村は寒村と呼ぶにもさらに寒村を重ねた村でありました、農作物はほとんど取れず、皆やせ細り現金収入などもないありさまでした。


村長はそこで顔をあげて話を続ける。


「ある日、黒いローブと帽子をかぶり目深にマスクで覆った一団が現れました、最初は皆恐れていましたが小袋を取りだして、このケーシの種があなた達を救うだとか、そのようなことを、言われ話を聞くことになりました」


ヤヒスは村長の目を真っ直ぐ見据えている。


「ソイツらには何でもリーダーがいたでしょう?そいつの名前は?」

ヴィーシャが村長に問いかけた。


「ベルン、と言って自己紹介をしました、それでこのケーシを育て、アヒンに加工して旅人や金のありそうなものを村に招き・・・その、あなた方にしたのと同じ手口でアヒンを吸引させ、アヒンそのものを売り、またその内に買いに来ると言う手法で現金を入手していました」


一度話を区切った村長にリャヒが続けろと促した。


「しかし、また買いに来ない者も多かったので、ベルンが言っていた方式を取りました・・・」

「村に閉じ込め、中毒にさせて小分けに物を奪う」


村長の言葉に対してパムが現場で見たことを口に出した。


「・・・それで村は潤ったというわけか」

ヤヒスが低い声を出す。


「あ、ええ、はい」

村長の動揺した姿を見てヤヒスは叫んだ。


「俺の村はじいちゃんの代まで寒村も寒村だった!!だけどうまくいっている村に頼み込んで技術を習い、最低限の人間を残して皆出稼ぎに出たんだ!!それで何年もかけて豊かな村になった!!だけども麦が全滅して俺は出稼ぎに出たんだ!!下水掃除だ!!アンタらは!!やったのか!?そう言うことを!!」


気が付くとヤヒスは立ち上がってこぶしを握り締めていた。


村人たちは皆無言で地面を見つめている。


「ヤヒス、ヤヒス、気持ちは分かるけれどもこの話の肝心な部分はベルンなる人物のことよ」

ヴィーシャがヤヒスのズボンを引っ張り、小声で話しかけて来た。


ヤヒスはドカリと地面に座り込むと腕組みをして空を仰いだ。


「その、ベルンは種の他には何か残していかなかったの?」

「え?ああ、名前を書いた紙切れを渡されました」

ヴィーシャの言葉に村長が答えた後、村の青年がどこかに走り、息を切らせて戻って来た。


「この紙です」


村長はそれをヴィーシャに手渡してきたので、彼女はそれを受け取ると文字を読み上げた。

「ベル・・・ン、何か小さな刻印があるわね?組織のマークか何かかしら・・・」


「ちょっと・・・おじゃましまぁすよ麗しのマスター・ヴィーシャ、その紙切れからは獣の匂いがしっまぁーす!!」

インテリジェンスソードのプチが話しかけて来た。


「農村だから獣の匂いくらいは付いているでしょう?」

「いえいえ~~その紙からする匂いは獣人・・・その刻印は狼が左を向いた形にみえませんか?」

ヴィーシャに話しかけたプチの言葉は途中から真面目な声になった。


「そう言えば見えるかも・・・」

「どれ、ワシにも嗅がせてみろい」

ヴィーシャの横に歩いて来たフィスは紙の匂いを執拗に嗅ぎだした。


「うん、うんうん、これは獣人の匂いだの、うーーーん・・・猫に近い何かだな」


「タイガー・・・の獣人・・・」


ミードリは顔をしかめながらつぶやいた。



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