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275 花の村③

薄暗い建物の中に入って目が慣れてくると、その凄惨な情景が目に飛び込んできた。

ほとんどの者が半裸の状態で、壁にもたれかかったり、地面に寝転がっている。


周囲には吐しゃ物や糞尿がこびりついており、それを避けて歩くのが困難を極めた。


「剥離!!」


ヤヒスはぐったりしている人々に端から剥離スキルを使用してまわった。


「むう・・・この者らを運び出したいが、あまりに不衛生で躊躇するな」

リャヒが戸惑っている所にマサカツがレインコートを持って走って来た。


「全員これを着けるんだ、病気も蔓延している可能性がある、レインコートで不衛生な面の接触を避けるんだ」


マサカツはリャヒにそれを投げ渡した。


全員がレインコートを着用すると、中毒者を次々と運び出していった。

「軽い・・・成人男性の体重じゃないわ、ひどく痩せている・・・ヤヒス!!何か消化の良い食べ物を!!」


「わかった!!」


ヤヒスはヴィーシャの言葉を聞くとはじかれたように駆け出した。


「あんたたち!!一番デカい鍋とコンロ!!大量のパンとミルクを用意しろ!!」


ヤヒスの声掛けにビクリと身体をこわばらせた村人は、銘々小走りにどこかへ駆けだした。

材料が用意されると、ヤヒスは魔石コンロに大なべを置き大量のミルクを入れて煮詰めだした、ある程度温度が上がったところに、パンを細かくちぎって投入していく。


どろどろとした「パン粥」が出来あがるとヤヒスは食器を持ってくるように村人に檄を飛ばした。

このような事態にあっても村人はおろおろするばかりで自発的な行動をしようとする者は一人もいなかった。


「しっかりしろ!ゆっくり飲み込むんだ!!」

「落ち着いて食べてください」

マサカツとミードリは出来上がったパン粥を中毒者の口にあてがっている。


その内に全員を家屋から運び出して、パーティーメンバーは全員食事を取らす作業に入った。


「貴様ら!なにボーッとしている!!手伝わぬか!!」

フィスの大声に反応して、村人は食事をあてがうのを手伝い始めた。


「一番大きいタライに大量の湯を用意しろ!!」

ヤヒスが食事を与える作業中に叫んだ。


さすがにここまで来ると、きびきびした動きを見せる村人も現れ始め湯を張った幾つかのタライが用意された。


フィスはタライに中毒者を漬けて身体を洗い出した。

「しっかりせい、あとは食べて寝て清潔を保てば回復するぞ」


その内に村人も加わり、食事を取らせるグループと身体をあらうグループに、自然と別れて来た。


「よし・・・これで最後の一人だ」

ヤヒスが痩せた男性を持ち上げてわら置き場に運び、他の者と一緒にワラの中に沈めた。


「さて・・・一通りのことは済んだわ、話を聞かせてもらう段になったわね」

ヴィーシャは鋭い目つきで村人の集団に視線を送った。

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