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271 塔の町 13

ヤヒスは言った


「その条件がそろうとどうなるんだい?」


「私達はこの部屋を出て塔を降りることが出来ます、ただ、下界はどうなっていますか?まだ継承権争いが続いて彼女が巻き込まれるようなことがありますか?」


「ん?数百年経っておるから国などとうの昔になくなり、観光業の平和な町になっておるぞ?」

リャヒがそう言うと、ボーシとソフィア姫は目を丸くした。


「す・・・数百年ですか?」

ソフィア姫は驚いたようすで声をかけて来た。


「そうよ、最もあなたの絵画や置物が土産物として売られているけどね、でもこうして見ると別人ね」

「あなた達が下界に降りても誰も気付かない、平和に暮らせる」

ヴィーシャとパムはソフィア姫に言った。


「とりあえず早々と地上に降りたいねぇ、ところであんた達がここを出ると塔は無くなるのかい?」

「いえ、塔は残りますが消すこともできます、どうしたら良いでしょうか」

「ここは塔が売り物の観光名所だからね、塔が無くなるとまずいんだよ」

マサカツとボーシは地上の様子を色々と話しあっている。


「そうですか・・・では、管理者権限で一階まで降りましょう!」

ボーシがそう言うと、また塔を降ることになるかと思っていた面々は肩を撫でおろした。


「ではいきます!管理者権限!フロア移動1階!!」

ボーシが叫んだ次の瞬間、最初に入って来た調度品が並んだ部屋に全員移動していた。


ヴィーシャを先頭に塔の入り口からぞろぞろと外に出ると、ボーシとソフィア姫は驚いた様子で周囲を眺めまわしている。


受付の男は相変わらず舟をこいでいるので、面倒な質問をされる前に早々と塔を後にした。


「すごい・・・市がこんなににぎわっている、あっ、城が残っているぞ」

「本当ですね・・・まだ残って・・・」

ボーシとソフィア姫は警戒するようなふるまいになった。


「だーいじょうぶだわい、あれは改装されて今はホテルになっている」

「とても豪華なホテルですよ」

フィスとミードリはにこやかに二人に話しかけている。


「さて、まだ午前中ね、今日はまだ先の土地に行けるわね、二人とはお別れしましょう」

ヴィーシャがそう言うとボーシは顔を曇らせた。


「そんな・・・まだ何のお礼も出来ていないのに!!」

「そうです!このままでは収まりません!!」

ボーシとソフィア姫は揃って礼がしたい旨を伝えて来た。


「ふーん・・・あなたたちは今何ができるの?一文無しよ?助けた相手に今日稼いだ日銭で何とかしようってんじゃないでしょうね」

ヴィーシャはいつになく冷たい態度を見せた。


「ああ、そうそう、俺たちがいらなくて持て余している物を引き取ってくれたらそれでいいよ」

ヤヒスはリュックから皮袋を出した」

「ん?ははは、ヤヒスの奴め、たしかに不要になる物だな、これはいい」

「まぁあんた達には困らない物かもね」

ヤヒスの言葉にリャヒとマサカツは笑って拳を合わせ合っている。


「じゃ、この地面に置いたのを処理しておいて」

ヴィーシャがそう言うと、全員背を向けて歩き出した。


「持て余している物?なんだろう」

ボーシがしゃがみ込んで袋を開けると中には高額の貨幣が詰まっていた。

「こ・・・これは!!」


ソフィア姫は立ち上がり、歩いて行く黄昏パーティーの背を見つめている。

ボーシも皮袋を抱えて立ち尽くしている。


振り向いたヤヒスが手を振りながら言った。

「それなら小さな家を買ってまだおつりがくるよ!!仲良く暮らしてね!!」


他の者は前を見たまま手をあげてゆらゆらと揺らしている。


「やはり善の者だった・・・これがあれば・・・平和に暮らせます姫様」

「もう国は滅んだのだから姫ではないわ、ソフィアって呼んで」


二人はその場で抱き合い薄く涙をこぼしていた。

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