27 変装
「外に出るのが怖い」
ヤヒスは両手に大量の食材を抱えて出入口に立ち尽くしている。
「はあ?」
ヴィーシャが怪訝な顔をする。
「どういうことなの」パムも不思議そうにしている。
ミードリは頭に手を当てて困った顔をしている。
「街へ出たらそこら中からひそひそ声が聞こえて、その内誰かがダンジョンマスター万歳とか叫んで、みんなが詰めかけて、市場を歩いたら、あれもってけこれもってけって」
「そ、それでそのありさまなのね、有名税みたいなものね」
ヴィーシャがひきつった顔になる。
ヤヒスは食材をテーブルに置いて突っ伏した
「そのうちみんな慣れるわよ」
「そうだといいけど」
「変装、と言うのはどうでしょう」
ミードリが人差し指をあげる。
「変装、眼鏡や帽子でごまかすと良いね」
「そうよ!変装しなさい、私が市場で眼鏡と帽子買ってくるから、それとテーラーでおまけにもらった服一式に着替えなさいよ」
ヴィーシャが声を出す。
「この服もったいないんだけど」
「悪いけど、田舎者丸出しだから、これを機に王都に合わせた服に着替えたら?」
「はい、言う通りにします」
ヤヒスはまたテーブルに突っ伏してしまった。
「じゃあ行ってくるわ」ヴィーシャはそう言うと街へ出て行った。
その間にヤヒスは食材を分けてその一部を調理していく。
(食材が無料だったのはいいけど、なんとなく心苦しいな)
そう考えながら、皮を剥いたり刻んだりと食材を料理へと変えていく。
料理が出来た頃ヴィーシャが帰ってきた。
「あら、良い匂いがすると思ったら料理していたのね、もうお昼になるものね、はいこれ」
と眼鏡と帽子を手渡して来る。
「うん?服も着替えたのね、これなら王都の人間にふさわしい人間よ」
そう言って手を広げる。
「うん、こんなもんかな」
ヤヒスは眼鏡と帽子を身に付ける。
「見た目はまずわからないね」パムがそう言った。
「そうですね、まずわからないと思いますよ」
ミードリも賛同する。
「これでいいわね、昼食を食べましょう」
ヴィーシャがそう言うので全員テーブルについた。
「ん、この魚のムニエルおいしい」
パムが嬉しそうにしている。
「鮮度が良いのをくれたんだ、やっぱり違うんだね」
ヤヒスはキノコのスープを飲みながらそう言った。
「明日からまたクエストよっ今度は一泊で出かけましょう、まぁ野宿だけどね」
ヴィーリャが明るい顔をして言った。




