268 塔の町10
「つまり、フィスの足の裏とヤヒスの手の平を結合する、そこで剥離のエネルギーとフィスのジャンプを合わせればおそらくあの穴に届くと思う」
マサカツの提案はかなり無謀なものに思えたが他に何もない以上それを試すことになった。
「んぎぎぎ、フィスは案外重いな・・・」
ヤヒスはフィスの足の裏に自分の手のひらを結合して上空へ向けている。
フィスは身体にロープを纏わせて真剣な表情で上空の穴を睨む。
「もうちょい、もうちょい右・・・行き過ぎ」
ヤヒスとフィスを他の面々が支え、マサカツはバランスを見て指示している。
「よし、そこだ!」
マサカツが叫ぶとヤヒスとフィスはカウントダウンを開始した。
「「5・4・3・2・1・!!剥離!!」」
その瞬間フィスは矢のようにはじかれて上空に飛び、穴の縁ギリギリに突っ込んでいったが、瓦礫やら何やらが崩れる音がして、穴からそれらが大量に降ってきた。
「わぁああああ!!」
ヤヒスは右往左往しながら瓦礫を避けている、他のメンバーも声をあげて降って来る瓦礫を避けている。
しばらくすると瓦礫の落下は止み、穴からロープが落ちて来た。
「ああもう、なんだったの、瓦礫があんなに落ちてくるだなんて・・・」
「俺、ちょっと頭に当たったよ」
ヴィーシャとヤヒスの会話だ。
「うーん・・・想像以上に勢いがついたんだね、多分穴の上にある階をいくつか突き抜けたんだろうよ、いや面白かった、多段式ロケットみたいだな、ははは」
他の者はマサカツのことを遠巻きに見ている。
「まぁ・・・ロープも落ちてきたし、あの子ドラゴンだから大丈夫だと思うけど、さてロープを登るわよ」
そう言ってヴィーシャはロープを器用に登って行く。
それに続いて一人づつ登って行くが、ミードリとパムは苦戦してはいたが登り切り、最後にヤヒスの番になったがヤヒスがロープにつかまるとそのままロープごと引き上げられた。
「いや、楽が出来たありがとう、フィス!フィス!!」
ヤヒスはフィスを呼んだ
「なんぞあったかの?マスターよ」
「痛くなかったかい?」
「これぐらいへーちょだわな」
「ありがとう、君がいなかったらどうなっていたことか」
ヤヒスがフィスの頭を撫でると彼女は笑顔でヤヒスに抱き着いてきて胸に顔をうずめて匂いを嗅いだ。




