267 塔の町⑨
塔の外に続く螺旋階段を一行は進んで行くがその足は遅々として先を行かない。
「うぅ~~地面があんなに深く・・・」
ヴィーシャは及び腰で階段を進んでいる。
「うわぁ~~風が強い・・・」
ヤヒスも足取りが重いようだが、地面が見える状態で風が強く吹けば誰でも臆するだろう。
「こ、こんな状態で魔物が出たらどうなるんでしょうか・・・」
ミードリは足元を見ないようにして恐々と階段を登っている。
「あぁ~~言っちゃったよ、これは魔物出没フラグだね」
マサカツは辺りを見回しながら言った。
「マスター!そこの出張ったところに何かおる、こりゃ魔物だのう」
先頭を行くフィスはそう叫んだかと思うと鋭く跳躍して魔物の胴体に鋭い蹴りを叩き込んだ。
魔物は空中へ投げ出されて、そのまま自由落下していく。
「ふぅ、危ない所だったわね」
ヴィーシャ他の面々が気を抜いて壁にもたれたりしゃがんだりしていると、船の帆が翻るような音がして落ちたはずの魔物は翼を広げてヤヒスの前に躍り出た。
魔物が口を開けると中に火炎が躍っている。
「しまった!!」
ヴィーシャの叫びが終わるか終わらないかの内に、鋭い風切り音が響き、魔物の口内に矢が2本半分以上まで刺さり、ノックバックで魔物は空中でまろぶと、塵と魔石にかわって落下していった。
「ふぅ、エルフの矢を2本も無駄にしてしまった」
マサカツは残身の姿勢で弓を構えたままでいる。
「一度に二本つがえて撃っていた、一本では駄目だったの?」
パムがマサカツのズボンをひっぱっている。
「一本は攻撃キャンセルの効果が乗っている、これで火炎を無効化した、だがこれで倒せる確証が無くてね、もう一本はスタンの効果が乗っているんだ」
「何にしてもマサカツさんのおかげで助かりました」
ミードリはため息をついた。
その後も一行は螺旋階段を登ると開けた場所に出たが、階段はそこで終わっていた。
「階段が無いわ」
ヴィーシャが言うとマサカツは床を調べ始めた。
首をひねって周囲を見回していたリャヒは上を見つめて言った。
「上だ、しかも高いぞ」
そう言われて全員が上を見ると真ん中に大きな穴が開いた塔の続きが見えた。
「と、遠いぞ・・・」
ヤヒスは声をもらす
「フィスの跳躍で行けるんじゃないの?」
ヴィーシャはフィスを見下ろして声をかけた。
「無理だわ、あの距離までは届かん」
それを聞いて皆肩を落とした
地面を探っていたマサカツも何の仕掛けも見つからないと言ったが、続けてチヌックを使えばいいのではと提案してきた。
「そりゃ気付かなかった」
ヤヒスはそう言うとチヌックを呼んだが、グリフォン形態のチヌックは何かのフィールドに阻まれて塔の中に入ってこられなかった。
「これ、積んでる?」
ヴィーシャが間の抜けた表情で言った。
「いや、ここまでは俺たちの力で何とか出来るように巧妙に仕組まれていた、何かの解決法で上まで来いと言うことだ」
そこで全員が持つスキルを再確認したが、上空にある穴へ到達できそうなスキルは無かった。
「俺、結合と剥離だもんなぁ・・・話にならないよ」
ヤヒスの言葉を聞いてマサカツが何か独り言をつぶやきだした。
「引き剥がす・・・いや、ヤヒスの剥離は何か吹き飛ばすようにも見えた・・・」
その後、マサカツは両手をパンと叩いて言った。
「結合状態から剥離をするのはかなりのエネルギーが必要なはずだ・・・フィスの足の裏に・・・うまくいくかもしれない案が浮かんだ」
マサカツはそう言うとヤヒスとフィスの二人を交互に確認した。




