265塔の町⑦
ミードリの強烈な魔法で扉は吹き飛び粉々になり、炎がこびりついている。
「ミードリ・・・今のはなんなの・・・?」
ヴィーシャは困惑した声で言った。
「エクスプロージョンボールと言う火炎魔法です、炎を手のひら大に凝縮して、それを投げると炎が爆裂します」
「知らなかった、なぜ今まで使わずに?」
パムがミードリを見上げている。
「この魔法は欠点があるんです、凝縮した火炎を投げなければならないのですが、私は非力なので遠くに投げられません・・・開けた場所で使用すると・・・私たちもろとも爆裂します」
「なるほど、閉所で頑丈なつくりならば火炎が閉じ込められると・・・」
マサカツは散らばった扉の破片を蹴り飛ばして言った。
「うぅわぁ・・・えげつないのう・・・」
フィスはホールの中をのぞき、顔をしかめた。
「はぁ~~ずっとこの魔法を使いたかったんですよね~~~すっきりしました!」
ミードリ以外の全員がこわばった顔で彼女を見つめている。
ホールの熱気が収まるのを待って全員で再び中に入った、きれいだったホールは黒焦げになり、鎧はひしゃげてばらばらになり、あちこちに散らばっていた。
「あーあーあーボロッボロ・・・」
ヤヒスは足元に散らばる瓦礫や兜を避けて反対側のドアに向かって行った。
ホールから外に出ると、フィスの持っているダウジングが右の方を向いた。
「おん?この方向だと今来た方へ戻ることになるがのう」
「建築物の構造は何も決まり切った方形ではないんだ、進んでみよう」
マサカツが先を指さした。
しばらく進むと右手に大きな階段があり、ダウジングはその方にぐるんと向きを変えた。
「上の階へ続いているわね」ヴィーシャは先に立って歩き出した。
階段はそれなりに長く、到達地点には広大かつ長大な円筒がそそり立っていた。
「ほお~こりゃすごいのう」フィスが腰に手をあてて反りかえっている。
「どうやって登るんだ?」
ヤヒスがきょろきょろしていると、ミードリが声をかけて来た。
「ここに螺旋階段があります、幅が2ミルトほどの階段です」
全員が集まり、螺旋階段を目で追っている。
「む、何と長大な大規模な階段だ」
リャヒは上を見て腕組みしている。
「ふぅー・・・これ以外に登るすべはなさそうね」
ヴィーシャは先頭をきって階段を登り始めた。
カンカンと言う足音がどこまでも響いて行く。
「フゥ・・・この状態で魔物が現れたら戦いようがない、心配」
「うん、それにこれは登りが逆時計回りのらせんになっている、俺たちは利き手に持った武器が壁に干渉する・・・うまくないな」
パムの言葉にマサカツが返した。
それからどれくらい時が過ぎたかわからない頃に、大きな石畳にたどり着いた。
「これなら全員余裕で寝られるわね、ここで宿泊しましょう」
ヴィーシャの号令で皆荷をおろした。
「うーん・・・食料が少なくなってきたな、帰りの分も考えると大分節約しなければならないよ」
ヤヒスは不安そうな声を出した。
「今まで一度も魔物が出ていないけれども、寝る時には交代で見張りを立てた方がいいな」
マサカツがそう言うと皆それに賛同したので最初にヤヒスが見張りに立った。見上げているとどこまでも続く螺旋に吸い込まれそうな気分になって来る。
結局なにごとも起こらず次の見張りに立つリャヒを起こし、ヤヒスは毛布にくるまって床に転がった。




