264 塔の町⑥
「コイツを実証試験する必要がある」
マサカツはL字型の棒をダウジングだと仮定したうえでそう言った。
「試験ってどうやるんだい?」
ヤヒスが当然の質問を投げかけてくる。
「うん、ここは幸いまっすぐのびる廊下だ、そこにこれを置く」
マサカツは入り口でもらった姫様の絵が描かれたチケットを取りだした。
「試験者は目隠しをしてこの棒を両手に持ちゆっくり進んで行く、そこでチケットに最接近もしくは踏んだ時に棒が作動すれば合格だ、これを俺たち全員がやる」
「結果にばらつきが出た場合はどうしますか?」
ミードリが手をあげて言った。
「うん、その場合個人の資質が作動に関与している可能性がある、個人に絞って10回ほど繰り返せば結果が出たと言っていいだろう」
マサカツは顎に手をやって片手でダウジングをいじっている。
「で、私からになるのね」
ヴィーシャが目隠しをして廊下の向こうに立っている
「じゃあゆっくり進んでいいよー」
マサカツが指示すると彼女はゆっくり前進しだした。
チケットはもうすぐ目の前だがダウジングは反応しない、さらに踏み込むとヴィーシャの持っていたダウジングが90度左右に開いた。
「うわぁ!?なんか動いたわよ!?」
「一人目は成功ですね・・・全員が同じ結果ならこれはほぼ間違いなく目的の物をしめすマジックアイテムの類です」
「む、開いたであるぞ!?」
「ぬぉ、動きおったわい」
リャヒにフィスと続いて全員が試したが皆同じ結果だった。
「うん・・・本来ならもう一度1人10回ほどは試験する必要があるが、時間も無いしこれで進めていこう、フィスが先頭に立ってダウジングを持つ」
「なでワシなんじゃ?」
フィスが疑問を投げかけてくる。
「うん、先頭を歩くと言うことは、それだけ魔物との遭遇率が高いと言うことだ、君が一番頑丈だからさ」
「なるほどのぅ・・・」
「予備、戦闘で破損するかもしれないからもう一組予備を持って行こう」
ヤヒスはリュックにダウジングを一組しまった」
廊下はずっと真っすぐで、枝道もいくつかあったがどれもダウジングに反応しなかった。
「これだけ枝道があるのに反応しないのね、さっきのは偶然だったのかしら」
ヴィーシャが困惑気に声を出した。
「マサカツさんの推測と試験もそうですが、フロアの入り口にアレが設置してあること自体、何かのキーアイテムな証です」
ミードリは眼鏡をずらして言った。
「お?おぉ?」
「どうしたフィス?」
ヤヒスが声をかけると彼女は言葉を返してきた。
「右側に先端が向いて引っ張られよる」
「む、ドアが見えるな、ここへ入れと言うことか?」
リャヒはドアをゆっくり空けた。
全員中に入ると円形の広いホールになっていることが分かった、壁面には甲冑が剣を掲げて並べられている。
「ああー・・・わかっちゃった」
「私も、甲冑は魔物だと考える」
ヤヒスとパムがそう言った途端に甲冑の脚装甲がフロアに着地して金属音を立てた。
「この数はめんどくさいわね・・・」ヴィーシャが大剣に手をやったその時にミードリが言った。
「みなさん!いったんドアから外に出てください!!」
全員ぽかんとしている内にミードリがもう一度言った。
「早く!」
そうなるともう、全員慌てて外に出るが、鎧は剣を構えて動いて来る。
「・・・エクスプロージョンボール!!」
ミードリは手のひらに小さな火球を浮かび上がらせてホールの中に投げ入れて、ドアを閉めた。
「全員壁に張り付いて!耳をふさいで!口を開けて!今!!!」
ミードリが叫ぶと、爆炎が扉を吹き飛ばし炎が噴出し、廊下が揺れて天井から砂埃がおちてきた。
「う・・・はぁ・・・」
ヤヒスは座り込んで声をもらした。




