表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

258/272

258 平等の都市③

黄昏パーティー一行は早朝から都市ソビエルの街路を急ぎ、城門を目指していた。


「向こうの方が早かったみたいだね、兵士がたくさん構えている」

ヤヒスはため息をついた。


「このような早朝にどちらへ?」

兵士の一人が問いかけて来る。


「私たちは旅人、この都市から旅立たせてもらうわ」

ヴィーシャの答えに別の兵士が話を返して来る。


「この都市は一度入ったらその民となってここから出ることはできません、それにあなた方は余計なことまで知りすぎた」


「そう、私たちの邸宅のことをね」

民長が兵士をかき分けて出て来た。


「やっぱり盗聴していたか、しかしあの小声も聞き洩らさないのはすごいね」

マサカツは頭の後ろで手を組んで民長に投げかける。

「我が国の特技ですからな、さてこの国にとどまるか外に出られる代わりに土の中、二つの選択肢を選んでください」


「どちらも選ばないよ」

ヤヒスが声をあげると兵士たちが槍を向けて前進してきた。


「お前らごとき一瞬でなぎ倒すことが出来るが、それは勘弁してやろう」

小柄な少女にしか見えないフィスの言葉に兵士は笑い声をあげた。


ヴィーシャは腕組みして仁王立ちし、微笑みを浮かべている。


その後ろでヤヒスが叫んだ。

「チヌック!!」

すると、どこからともなく一羽の鷹が現れて、地面に降り立つと巨大なグリフォンへと変化した。


「ば、化け物だ!!」

「なんだこれは・・・」

「民長様!!いかがいたしましょう!?」


兵士たちがそのようなやり取りをしている隙にパーティー一行はチヌックの背に乗り上空に吸い込まれて行った。


「民長さんーー!!この国はいずれ崩壊するぜ!!逃げる準備でもしといたほうがいい!!」

マサカツが叫んでいる。


高く舞い上がったチヌックは旋回してソヴィルバーレの方向に滑空していく。



ソビエルから旅立った黄昏パーティー一行はその後も続く森林地帯を飛び日が落ちる前に開けた場所に降り立った。


「いやぁお腹が空いた、すぐに食事にしよう」

ヤヒスはてきぱきと準備を始めた。


「さて、食べるぞい、腹が減った」

フィスはライ麦パンにかぶりつく。


「ドワーフにもらったお茶、美味しいな・・・」

マサカツは美味しそうにコップを傾けている。


それぞれに夕食を片付けると各々平たい場所を選んで毛布をかぶった。


翌日は早朝から空を行くとチヌックが声を出した。

「我が主、遠方に高い塔が見えます」


それにヤヒスが答える。

「塔?町があるのかな」

「塔の下部は森におおわれていて確認できません」


「とりあえず暇が無くなって良かったわ、この森林地帯はどこまで行っても同じに見えるもの」

ヴィーシャが嬉しそうな声を出した。


しばらくするとうっすら塔のシルエットが見えて来た。


「高い塔ですね・・・何の用途なんでしょう」

「これだけ土地があれば塔の中に住む必要はないな、うん?薄く煙が上がっているのが見えるな、町があるようだな・・・しかしここの文明度合いであのレベルの塔を建設出来るものなのか?」


ミードリとマサカツは塔に興味津々と言ったところだ。


やがて麦畑が広がる開けた土地に入ると、町の規模がはっきりと見えて来た。


「比較的大きな町、塔との関係性が気になる」

パムがそう言うとヴィーシャもそれが気になると言うような話をしはじめた。


町の外れに降り立つと徒歩で町の門を目指す。


「城門が開かれていますが門番はいませんね」

「うん、平和な町なのかな・・・しかし大きな塔だなぁ・・・」

ミードリとヤヒスは並んで空を見上げているが、黄昏パーティー一行以外の者は、塔にはお構いなしで各々の生活を営んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ