257平等の都市②
「まず民長にお目通りいただきたいのですが」
兵士が笑顔で手招きをした。
「民長?市長や国王ではなく?」
「はい、王と言う概念はなく等しく住民のため、民長と呼称しております」
ミードリの質問に兵士が答えたが、それを見たヴィーシャは顔色を曇らせた。
広い都市なため長いこと兵士に付いて行く事になったが、途中いくつかの街路を通り過ぎた。
「むういるがどこか寂しいと言うか精彩を欠くな・・・」
リャヒは独り言を言っている。
ようやく民長の家に案内されたが、他の住民の家と大差がない大きさで調度品も質素なものだった。
「民長様、旅の方を連れてまいりました」
「おお、入ってもらいなさい」
兵士が声をかけると、中から返事があり、一行は家の中に入った。
「旅の方とは珍しい、私はこの都市の民長をやっておりますレニエンと申します」
黄昏パーティー一行は全員頭をさげた。
「とりあえず部屋の案内をいたします」
そう言って寝室やキッチンなど必要最低限の作りを案内された。
「いや、簡素でどうにも、ここは平等の町でして、服も家もほとんどの者が皆平等に暮らしております、食事も飢える者などないようにです」
「通貨はどんなものを?」
ミードリの質問にレニエンが答える。
「ございません、皆平等で衣食住が完備された生活には必要が無いのです、それに通貨は目を曇らせます」
そう言った会話がなされた後で、一行は宿に案内された、簡素で何も無いような宿だった。
「入るわよ」
ヴィーシャはノックして男性陣の部屋に入って来た。
「話とは何でしょうか?」
ミードリが質問を投げかけてくるとマサカツは口に指を当てた
全員が車座に集まるとマサカツが小声で言った。
「盗聴されているかもしれないから小声で話すんだ、簡潔に言うとこの都市はおかしい、独特の思想で縛り付けられている、平等と言うね」
「私もそれは思っていたわ」
ヴィーシャがその話に賛同する」
「民長の家に案内された時に妙に歩かされただろう?あれはおそらく別の場所にいる民長をあの家に呼び出す時間を稼ぐためだ」
「意味が分からんの、どういう事だ?」
フィスが顔をかしげている。
「おそらく別に豪華な私邸があるはずだ、今チヌックに調べさせている」
そう言ってすぐに窓からチヌックが入って来た。
「我が主、壁の外にきらびやかな屋敷がいくつも建設されておりました」
「民長は?」
「は、一番豪華な屋敷で豪勢な料理を食しておりました」
チヌックはヤヒスに詳細を語りだした。
「やはりあったか別邸が、皆は民長の家で違和感を感じなかったか?話をするだけならダイニングで良いのに細かい設備まで案内した、あれは私は質素な暮らしをしていますよ、と言うポーズだ」
「私も違和感がありました、住んでいる気配が無いのです、ほこりも溜まっていましたし、積もったほこりに真新しい足跡がいくつも」
マサカツの話しにミードリが補足するように言葉をつなげた。
「・・・嘘っぱちの都市ってわけね」
「ふむ・・・話をまとめると民は平等をしいられ、いや、当たり前だと思っているやもしれぬ、そして一部の者が私腹を肥やしていると言うことか」
ヴィーシャとリャヒも憤慨を隠せないと言った態度である。
「ひどい話だ、こんなことがあるなんて・・・」
ヤヒスがそう言った後でマサカツが話し出した。
「そう言った都市は俺のいた世界ではいくつもあった、崩壊した国もまだ続く国もある」
「こんな都市平等でも何でもない、明日即刻立ち去るべき」
パムは眉毛を吊り上げて怒りをあらわにした。




