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253/272

253 戦

ヤヒス達はチヌックをドワーフ村の広場に降ろし、ブントの家の戸を叩いた。


「ブント!!ブント!!一大事だ!!」

ヤヒスが叫ぶとブントが慌てた様子で魔石ランタンを手に戸口に現れた。


「なんだヤヒスじゃないか、どぉおしたんだ」

「対岸の国から軍勢が来る、戦闘になるぞ」

「ぬぅ来たか、こうしゃちゃおれん!!」


ブントは広場の隅にある大きなドラを何回も叩いた。

すると、家々に灯りがともり、皆駆け出してきてどよめきが広がっている。


「戦だ!相手は対岸の国!!エルフとゴブリンに早馬を出せ!!」


彼の号令ですぐに早馬が飛び、広場はがやがやと落ち着かない様子だ。


「相手の数は!?体格や武器などわかるか!?」

黄昏パーティーにブントが質問を並べていく。


「船の規模からして300以下、体格は俺たちよりも小さい、武器は槍や剣に弓、比較的堅固な鎧を着ている」

マサカツは冷静な様子で伝えた。


「300でお前たちより小さいか、なんだ拍子抜けだな」

「しかし何かのスキルを持っている可能性もあります」

ミードリはブントに警告めいたことを言う。


「ワシらだけならそれはてこずるかもしれん、だがゴブリンとエルフがおる」

「なんぞ防衛柵でも作らんでよいのか?」

「相手を出来るだけ広場に入れる、それで十分だ」

「ほ、なんぞ一応の策はあるみたいだのう」


フィスとブントがやり取りしている所にヴィーシャが加わる。


「理解してくれるとは思うけれど、私たちはどちらにも着かない、戦いには参加しないわ」

「無論だ、お前たちは立場上そうするしかない、そうだろう?」

ブントは想像していたよりも理解が早かった。



早朝の薄暗い中、小道の草や枝をカサカサと鳴らし金属音をキシキシと響かせる集団がいる。

対岸のジャパン国の軍勢だ。


彼らはゆっくりと槍を構え広場の中に展開していく。

兵の一人が家屋に近づいたとき、風を切る音が複数鳴り響き、何名かの兵士が倒れた。


それを皮切りに矢の雨が降り注ぎ、兵は次々と倒れていく。


ドワーフの鉱山に位置取ったエルフの集団だ、彼らは頭からすっぽりと全身を布で覆っている、エルフが作り出した視界に入らず射手を特定しにくい素材の布だ。


「固まるな!!走れ!森に入れ!!」

命令を受けた兵士が木々に走り寄ると、頑健な体躯をしたゴブリンが現れ、拳一発で吹き飛ばしていく、ゴブリンは揃って雄たけびを上げ、瞬歩の速さで槍衾を潜り抜けている。


「おーお、えげつないのう、弓手は見えん、逃げた先ではゴブリンに翻弄されたのちに雄たけびときたか」

「あれはタウントの一種ですね、敵兵の動きが明らかに散漫になっています」

フィスとミードリは鉱山の上から行く末を見守っている。


しばらくすると、ゴブリンの守りが薄い部分が現れたので、兵はなだれ込むようにそこに殺到した。

しかし兵の一団は塊となって反対側の森に吹き飛んで行った。


大木を手にした巨大なドワーフである、ゴブリンの動きに誘導され、軍勢は次第にドワーフの方へ押し込まれ、そのまま振り回される大木の餌食となり宙を舞った。


隙をついて逃走した兵を確認したエルフが三本のかぶら矢を放つと独特な音を放ちあたりに響いた。


ドワーフもゴブリンも戦闘をやめ、エルフは岩棚から立ち上がり被っていた布を払った。


「我々の勝利だ!!!」

巨大なドワーフは叫び声をあげると空気がビリビリと振動した。


「・・・うるっさ」

ヴィーシャは耳をふさいでいる。


日が登って朝日がさすと敵兵の死骸が良く目に入るようになった。



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