251 技の披露
フィスは高く舞い上がり、身体を幾重にも回転させながら地に着いた。
エルフの間から驚きの声が漏れる。
フィスは格闘技の型と舞飛び踊る動きでエルフたちから拍手をもらった。
「我らの俊敏さや柔軟さよりも上だぞ」
「それにあの高い跳躍もなんだ?見たこともない」
「うーむ・・・侮りがたし」
エルフの方は素直に技を認めているようだ。
次にヴィーシャは大剣を軽々と振り回し、素早い動作も見せつつも剣を支点とした舞を披露する。
これにもエルフは驚嘆の声をもらし、野蛮だという者や、大層なものだと賛辞を送る者もいた。
最後にマサカツが弓矢を手に前に出た時には、周囲から失笑の声が漏れ聞こえてきた。
「我ら弓の使い手を前にして良く出て来たものだ」
「えらく長い弓だな、材質はなんだ」
「いやいやこれは見ものだな」
エルフたちはマサカツのことを面白がって見つめている。
周囲に礼をしたマサカツは、和弓を美しい動作で引くと、的に向かって矢を放った、それは的の中心に刺さり乾いた音を立てた。
エルフたちは静まり返っている、次の矢を引いたマサカツは静かに弦を引き矢を放った。
ベギリと言う音ともに、二矢目は先の矢をそのまま貫いた、エルフたちはざわめきをおこした。
「つ、継ぎ矢だ!信じられん!!」
「我らでも容易ではない技を持っているのか・・・」
そこやここから驚嘆の声が上がった。
マサカツはそのまま三の矢をつがえて静かに放つ。
ミシリ
と言う音が響き、一二三全てが継ぎ矢となって的から下がっていた。
エルフたちは驚嘆の声をあげ拍手をする者や、羨望のまなざしでマサカツを見る者など、どよめきが波の様にうねっている。
マサカツは三方礼をしてから広場の隅に下がった。
ヴィーシャが演武の終了を宣言すると、マサカツの所にどっとエルフが押し寄せた。
「信じられん!何をやった!?それにその弓はなんだ??」
「弓使いとして尊敬に値する」
「外の者にはかような使い手が幾人もおるのか??」
マサカツは質問攻めである。
どことなく澄んでいたエルフの顔が驚きの表情に変化している。
「おーお、すごい人気だの、マサカツの奴弓使いの種族に弓で圧倒するとはうまくやりおったな」
フィスは意地悪そうな顔をしている。
「む、良いのだ、相手の懐に入り込み圧倒してみせる、これならば文句は出ないであろう、技が埒の外であるがゆえに嫉妬を通り越して尊敬にかわっておる」
リャヒはマサカツたちを見つめて腕組みをしている。
それまでは客室にて食事をとっていた黄昏パーティー一行は、この日は魔石の明かりの元、広場でエルフたちに囲まれて食事をしていた。
「君はあんな大剣をあやつるなんてすごいな」
「アンタはあんなに小さいのにどうやってあれほど高く跳躍できるのだ?」
ヴィーシャとフィスは囲まれて話の輪に飲まれている。
「おいマサカツ」
「マサカツ殿」
「マサカツ様」
マサカツは大勢のエルフから話かけられている。
「うむ、まずまず成功だったな」
リャヒがそれを見てうなづいている。
「さすが王だね、こうもうまく収めちゃうとは、エルフのみんなは今までと大違いだよ」
ヤヒスはリャヒの腕を叩いている。
「戦やいさかいはな、最後の手段なのだ、外交に外交を重ね、双方これで良いと思える何かを見つけるのだ、一方が特をしてもだめだ、この島は三方得のはずだったがエルフがそれを忘れかけていた」
「なるほどねぇ」
リャヒとヤヒスの会話にパムが混ざって来る。
「補助師は植物も扱う、最も現在はほとんど無いけれど、毒草が別の植物と混ざれば薬になる、片方だけでは駄目、合わさることが大事」
「何にしても私たちは受け入れられたようで何よりです」
ミードリがほほ笑んだ。




