25 正装
「とにかく服よ、正装をそろえなきゃ」
ヴィーシャが大声で言う。
「そんなの持ってないよ、どうすればいいんだ」
ヤヒスは困惑している
「町で一番のテーラーを教えてあげるわ、50万は用意しなさい、ヤヒスはお金あるんでしょ」
ヤヒスダンジョンの解放式に主賓で招かれたヤヒスは困惑のさなかだった。
「ふたりとも慌てていますね」
ミードリは落ち着いている。
「主賓となれば無理もないけど」
パムは他人事のように見ている。
ヤヒスはまず銀行に出かけて手続きをした。
「これはヤヒス様いつもお引き立ていただき、それで本日はどのようなご用向きで」
「あの、ダンジョン解放式に主賓で呼ばれたので、正装を作ろうと」
「ふむ、それでしたら50万ゴールドもあればよろしいかと」
「では引き出しで」
「かしこまりました」
銀行受付はしばらく奥に行き、また戻ってきた。
「50万ゴールドでございます、今後ともよろしくのほどを」
ヤヒスはゴールドが入った袋を抱えて足早にテーラーに向かった。
テーラーに入ると店主がちらりとヤヒスを見る。
「どんな用で?」
「ダンジョン解放式で着る正装を急いでお願いします」
「どこの家からの使いだね」
テーラーはヤヒスの貧相な恰好を見て完全に見下している。
「こ、これ!50万ゴールドあります!」
店主はゴールドを見て目の色を変えた。
「し、失礼いたしました、すぐに採寸を、おーいお前たち、仕事だぞ!」
店主がそう叫ぶと、女性が数名出てきて、ヤヒスを採寸していった。
「いや、この度は当店をお選びいただきまことに感謝しております」
店主の態度は180度かわっている。
その後もこまごましたやり取りを経て店を出た。
振り返ると店主が深々と頭をさげている。
パーティーホームに帰宅したヤビスは疲れ果てていた。
「あら、へとへとって感じね」
開口一番ヴィーシャが言った。
「世界が違うよ・・・村では野良着ばかりだったし服の採寸なんて初めてで、今だってほら、ズボンの裾が足らないだろう」
テーブルに突っ伏して魂が抜けたようになっているヤヒスに、ミードリがお茶を出してきた。
「知らない世界を初めて知ると疲れますよね、お茶、飲んでください」
ヤヒスにはミードリが輝いてみえた。




