247 水車のマニュアル
「うん・・・45度区切りでそれに、金属をカマせているだけだな、問題はRを出す作業を出来る者がいるかどうかだな、単純な構造だが作れない者もいるだろうし・・・可動部も良く見るとずいぶんすり減っている、すぐにでも取り換えだな」
「マサカツ、この図面はすごいねぇ、えらく精密だ、」
ヤヒスとマサカツが水車の作業をしている。
「まぁポンチ絵でも良いんだけど性分でね」
「ポン・・・?」
「ま、ここはほとんど終わったから斜面の様子を見に行こう」
「うん、そうだね」
ヤヒスはマサカツの話しに乗って水路の先に向かって行った。
斜面のある現場に到着するとゴブリンたちが集まっていた。
「すげぇ怪力だな、ちっこいのに」
「あの岩もどけちまった」
現場ではフィスが持ち前の怪力を発揮して斜面を安息角にならしつつ棒杭を叩き込んでいた。
「ワシにかかればこんな崖へーちょでならしてやるわい!」
フィスの言葉に現場にいたゴブリンたちがやんやと喝さいを送った。
「さすがフィスだなぁ・・・」
「すごいな、ユンボに負けてないぞ」
ヤヒス達はそれを面白そうに見つめている。
村への帰り道には数人の女生とパムが固まって野草を見て何事か話している。
「これがヘテリケ草、このパーム草と混ぜて絞った汁を飲むと、のどや咳に良い、飲みやすくなるのはハチミツ」
「あれぇ、こんなのが薬になるとはねぇ」
「肌荒れは何かないかい?」
「肌荒れはヘチマの汁が良く効く」
「パム、薬草なんてわかるのかい?」
ヤヒスが割って入る
「植物学は補助師の基本、補助師は何も魔法的な理だけを指すわけではない、古代に薬草を精製していた集団が補助師の始まり」
「ふーん・・・植物体形が出来ているのか、牧野富太郎みたいな人がいるのかな」
マサカツは植物にも関心があるようだ。
広場へ戻るとヴィーシャとリャヒが延々と縄をないでいる。
「まだ続けるのこれ・・・延々と終わらない・・・」
「無心だ・・・無心であるぞ・・・」
それを見たヤヒスとマサカツがゲラゲラ笑っている。
「ん・・・アイツらぁ・・・」
「く、悔しい・・・」
「うーん・・・やっぱり手に職だね」
ヤヒスは上機嫌で畑へ続く道を歩いている。
「それは同感だ、一つの学問は隣り合ったそれに通じる、それは数珠つなぎの様に知識やスキルとしてつむがれるのさ」
「マサカツはさぁ、神だからそれだけ色々なことに詳しいのかい?」
「いいや、何の能力も付与されないまま放り出されたよ」
「じゃあどうやって」
「学校だよ、何年も学校に通った、本も読んだし研究もした、ドワーフの様に金属加工もたくさんしたよ」
ヤヒスの問いにマサカツが答える。
「学校かぁ、この世界にもあるけど選ばれた人や貴族が入れるもので一般人は縁が無いよ、学校に入ればそんなに賢くなれるのかい?」
とヤヒスが問う。
「・・・自分で言うのもなんだが、俺は人並み以上に学問に没頭した、だから賢くなれた、何も知識だけじゃない、話し方や、人との接し方、そう言う部分もね」
マサカツの目つきが少し鋭くなり、そこで会話は終わった。




